【小名浜港の物流】航路拡充し産業振興を(2月26日)

 いわき市の小名浜港と京浜港(東京港、横浜港)を結ぶ定期的な国際フィーダー航路が今月再開した。京浜港は北米や欧州各国への輸出入の玄関口になる。東アジアが主な運航先の韓国・釜山港を経由する既存の航路に比べ、輸送日数が大幅に短縮される。小名浜港の物流機能が強化された利点を前面に打ち出し、企業誘致や新たな産業の集積、地場産業の振興に努めてもらいたい。

 小名浜―京浜港の航路は2000(平成12)年に開設された。しかし、就航する船の混雑などを理由に、船会社が2020(令和2)年に運航を取りやめた経緯がある。釜山港を使う代替ルートはコンテナの積み替えなどに時間を要する。迅速な輸出入やアジア以外での取引を望む場合は京浜港までのトラック輸送を選択する荷主もいるという。

 京浜港との定期航路再開に加え、常磐自動車道と小名浜港を結ぶ小名浜道路が2025年度に開通すれば、海陸の物流機能が向上する。隣県をはじめ中通りや会津地方など県内企業にも小名浜港の優位性を売り込み、利用度を高めることで現行週1便の運航便数を増やし、企業の多様なニーズに対応する必要がある。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興へ歩む双葉郡内の産業再生にもつなげてほしい。

 市内の製造業は、人口減少に伴う労働力不足や市場縮小などの影響で厳しい環境に直面している。全事業所を対象にした2021年の製造品出荷額は約9350億円で、2年ぶりに増加したものの、仙台市に東北一の座を明け渡した。前年比で増加には転じても、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年の実績には約390億円及んでおらず、盛り返す力に欠けるのが実情だ。

 小名浜港の物流機能の強化を契機に企業誘致に努めると同時に、既存企業の技術力向上に資する設備投資や、新分野への進出を促す取り組みを強める必要がある。2050年の脱炭素社会の実現に向けた国のグリーン成長戦略で、重点分野に位置付けられている再生可能エネルギーや水素・アンモニア、自動車・蓄電池といった成長産業への参入など、社会環境に即応できる企業の育成にも注力するよう求めたい。(円谷真路)

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