TSMC熊本工場、日台による東アジア経済安保の新たな起点に―独メディア

25日、ドイチェ・ヴェレは、TSMC熊本工場が「東アジアの経済安保の新たな起点になる」と論じた。写真出典:Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd.

2024年2月25日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、台湾の半導体大手TSMCの熊本工場について「東アジアの経済安保の新たな起点になる」と論じる記事を掲載した。

記事は、TSMC熊本工場で24日に落成式が行われたと紹介。同工場は21万平方メートルの広さを持ち、12〜28ナノプロセスの半導体量産を年内に始まる予定であること、現地産業の振興ひいては日本の半導体産業復活の足がかりとなることが期待されていると伝えた。また、熊本工場について、日本政府や地方自治体がほぼゼロの段階から積極的に支援を示し、がわずか2年余りで完成したことが印象的だと指摘。日本ではTSMC以外にもラピダスが北海道で新工場建設計画を進め、ロームと東芝が宮崎県の新工場建設に投資するなど、10カ所以上の半導体工場建設計画が存在するとした。

その上で、日本で半導体工場建設計画が相次ぐ背景には中国による成熟技術半導体の急速なシェア拡大があると指摘。特に電気自動車(EV)やハイエンド家電に用いる28ナノプロセス半導体の昨年の市場シェアが台湾の49%に次ぐ29%で、27年には33%にまで高まると予測されているとした。また、米国による技術輸出規制は最先端技術に限られており、中国当局も規制の対象外である成熟技術半導体製造への投資に注力していることから、今後数年のうちに中国がシェアを独占する懸念も出ていると紹介し、経済安全保障、中国依存からの脱却という観点があるからこそ「TSMC熊本工場」が生まれたのだと論じた。

記事は、中国とのデカップリングが進む中で東アジアの技術産業チェーンの再編が起きていると紹介。勃発から2年を迎えたウクライナ戦争で、小麦や天然ガスの対ロシア依存という深刻な問題が浮き彫りになったことも、日本、米国、韓国、台湾による経済安保体制づくりを加速させているとした。

そして「TSMCの熊本工場建設は、幕末の黒船到来をほうふつさせる。日本はTSMCという『黒船』の刺激を受けて、官民挙げての半導体生産回復に取り組み始めた。地政学的な問題が渦巻く中、TSMC熊本工場は今後10年間の東アジアの経済・安全保障戦略の試金石にもなっている」と結んだ。(翻訳・編集/川尻)

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