「やしょ、うまかったぞ」お釈迦様が亡くなる直前、弟子「やしょ」が作った団子を…「やしょうま」起源は

坂井郷土食研究会のメンバーが作る「やしょうま」

特集です。2月15日はお釈迦様が亡くなったとされる日です。長野県内では米粉で作った「やしょうま」を食べる地域があります。郷土の味の魅力に迫りました。

■弟子「やしょ」が作った団子を食べ

坂井郷土食研究会のメンバー

ピンクや紫の鮮やかな花の模様が入っています。郷土料理の「やしょうま」です。

作ったのは筑北村坂井の女性グループ「坂井郷土食研究会」のメンバー。

旧坂井村時代の1990年から村の特産品にしようと冬の時期に集まって作り、筑北村の道の駅などで販売しています。

坂井郷土食研究会が作る「やしょうま」6個入り500円

鮮やかな模様は「やしょうま」の特徴の一つ。これには訳があります。

坂井郷土食研究会・塚田芳子さん:
「無地よりも、仏様にお供えするってことでこの時期お花がないから花柄と聞いてます」

「やしょうま」は、お釈迦様が亡くなったとされる2月15日の行事、「涅槃会(ねはんえ)」のお供え物。県外でも菓子を供える風習があるそうです。

名前の由来は諸説ありますが、お釈迦様が亡くなる直前、弟子の「やしょ」が作った米粉の団子を食べて「やしょ、うまかったぞ」と言って息を引き取ったという言い伝えからつけられたとされています。

■どうやって模様を

米粉で作る生地をふかす

あの模様はどうやって作られているのか、実際に見せてもらいました。

まず、米粉に熱湯を入れ、機械でこね、適当な大きさに丸めたら20分ふかします。

食紅で染める

ふかしあがったものを再度、機械でこねると、モチモチとした生地に。

続いて生地に赤、黄、緑など6色の食紅で色をつけます。

染めた生地を棒や、さまざまな形に組み合わせる

生地を棒状やさまざまな形に整えて、粘土細工のように組み合わせていきます。

坂井郷土食研究会のメンバー:
「ウメの花なんですけど、これが枝で、あと花。もうちょっと茶色を強くすればよかった」

金太郎あめの要領で伸ばす

白い生地で包み、体重をかけて伸ばします。

断面はきれいなウメ模様

糸で切ってみると断面は花の模様に。

坂井郷土食研究会・塚田芳子さん:
「毎回同じのはできない。なるべく同じようにと思っても、色もそうだし、昨日より葉っぱとかお花をもうちょっと格好よくやるとか、毎回、反省ばっかりで。皆さんに喜んでもらえればなと思いながら作ってます」

研究会では一晩寝かせてから殺菌して商品化しています。

■おすすめの食べ方は?

フライパンでこんがり焼くのが一般的

軟らかければそのままでも食べられますが、焼いて食べるのが一般的です。

坂井郷土食研究会・塚田芳子さん:
「一番シンプルなのは、フライパンへ油を引いてこんがり焼いたり、『砂糖醤油』が一番私たちは昔から食べてます。あとバターで食べたり、ジャムつけたり」

記者が試食

フライパンで焼いて、おすすめの「砂糖醤油」で―。

(記者リポート)
「外はカリカリ、中はもっちもちです。香ばしい焦げ目と砂糖醤油が相性バツグンです」

バターでも焼いてみます―。

(記者リポート)
「バターとやしょうま、合いますね。小腹がすいた時のおやつにピッタリです」

坂井郷土食研究会・塚田芳子さん

坂井郷土食研究会・塚田芳子さん:
「先輩方に教えてもらったものを守りつつ、私たちもいろいろ研究して新しいデザインや模様を、みなさんに喜んでいただいたり、楽しんでいただけるように、絶やさないようにと思っております」

■「やしょうま」の起源や分布

長野県立大学・中沢弥子教授

お供え物ということで「おやき」や「ニラせんべい」などの「粉もの」とは趣が異なる「やしょうま」。

食文化に詳しい長野県立大学の中沢教授に起源や分布を聞きました。

長野県の北部や新潟県に伝わる

長野県立大学・中沢弥子教授:
「江戸時代初期やその前くらいから食べられていたのではないかといわれています。うかがった話では、やしょうまは、お寺で作って子どもたちに配っていたと。似た形で米の粉の団子を食されているというのは、長野県の北信や中信の北部、東信の一部まで伝えられているように思います」

作る家庭は減っているということですが、今は和菓子店やスーパーで購入でき、食文化として受け継がれています。

■県最北の栄村では「みみだんご」

栄村ではー

最北の栄村でもー。

栄小学校の給食。児童がほおばっているのはー。

児童

6年生:
「(何食べてるの?)青のり味の“みみだんご”です。めっちゃおいしいです」

1年生:
「(みみだんご好きですか?)好き」

みみだんご(栄村での呼び名)

栄村では、「やしょうま」ではなく「みみだんご」と呼ばれ親しまれてきました。

作り方もやや異なります。米粉を使うのは同じですが、砂糖と塩の他に青のりやしそを混ぜて作られています。

耳の形をしているのは、「お釈迦様に人々の声を聞いてもらうため」などという言い伝えがあるということです。

みみだんご給食

伝統の味を大切にしようと小学校では少なくとも25年ほど前から、毎年2月15日に「みみだんご」を給食で食べています。

子どもたちが喜ぶ様子はその昔、寺で配っていたころと変わりません。

坂井郷土食研究会が作る「やしょうま」

「やしょうま」に「みみだんご」。

便利で食が豊かになった現代も素朴な味が守られています。

長野県立大学・中沢弥子教授:
「やはり(行事食)そういったものを大事にするという長野県の県民性が大きいと思う。おいしく作る技術、あと美しく作る、この時期にそういったものを作って食べて食を豊かにされている」

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