初レースでいきなりの長丁場も「まったく問題ない。非常に楽しみ」と佐藤万璃音【開幕直前インタビュー】

 2月29日(木)から3月2日(土)にかけて、カタールのルサイル・インターナショナル・サーキットで開催されるWEC世界耐久選手権の開幕戦に向け、2月24~25日に公式テスト“プロローグ”が実施される予定だったが、海上輸送コンテナの遅着によりテスト開始は週明けの26日(月)にずれ込んだ。前日の25日(日)までに何度も公式スケジュールが変更される自体となったが、実際の現場では大きな混乱もなく「なるようにしかない」と意外にものんびりモードだ。ちなみに、プロローグのタイムスケジュールは現地時間25日13時43分時点で、バージョン11まで発表されている。

 この日曜日は朝6時前からサーキットにコンテナが到着しはじめ、午前中は少しずつ機材や車両が搬入された。遅延の影響を受けたチームが慌ただしく設営作業などをしているなか、LMGT3クラスで2台のマクラーレン720S GT3エボを走らせるユナイテッド・オートスポーツから、今シーズン初めてWECにフル参戦する佐藤万璃音に彼の周辺の状況を聞いた。

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――プロローグを目前に多くの機材や車両が届かない等のトラブルでスケジュールの変更が出ていますが、佐藤選手の所属するチームの状況はいかがですか?

佐藤万璃音:「カタールに来る前に、ドバイでシェイクダウンや機材の確認をしていた関係もあり、マシンを走らせるための必要なものはドバイから、ピットの機材やテント類はヨーロッパから輸送されたこともあり、僕たちドライバーがサーキットに到着した際には、幸いにも機材や車両はもうほとんど揃っている状態でした」

佐藤「スケジュールが変更になった分、余裕を持って準備や時間を有効活用できていますので、必ずしも状況のすべてがネガティブとは捉えておらず、ポジティブにシーズン開幕の時間を過ごせていると思います」

設営作業を行うユナイテッド・オートスポーツのスタッフ

――佐藤選手がお住まいのモナコはヨーロッパの中では温暖な気候ですが、基本的にヨーロッパや日本の2月に比べると、日中は28℃前後とかなり暑い中のレースとなりますね。

佐藤「開幕前のドバイでシェイクダウンもあり、大体同じ気候のコンディションも先に体感していますし、僕自身は暑さの体力面に関してはまったく問題ありませんし、心配もしていません」

佐藤「僕がいままでに経験したフォーミュラやELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズのレースと比べると、WECの開幕戦のカタールでは1812㎞という一番長いレースとなりますので、初めてのロングディスタンスレースを非常に楽しみにしています」

――ロングディスタンスレース、そしてこのカタールでの開幕戦は佐藤選手にとって初めてのGT3マシンでのレースとなりますね。

佐藤「去年はユナイテッド・オートスポーツからELMSに参戦しLMP2マシンをドライブしてフルシーズンを戦ったのですが、4時間レースの中の一番長いスティントが1時間40~50分くらいでしたので、WECのロングディスタンスレースの本番にどんなことが待っているのか、走り出すまでは未知の世界ですね。僕にとって何もかもが新しく、学ぶべきことも多いですが、今シーズンの活動を心から楽しみにしています」

ユナイテッド・オートスポーツのピット前

――FIA F2からELMSのLMP2、そしてそれを継続しながら今季はGT3マシンにも挑戦し、念願のル・マン24時間レースへも参戦が決定していますね。

佐藤「去年はLMP2でル・マン24時間レースに参戦したいと願いながらも、結局はチャンスが巡ってこなかったこともあり、今年は念願のル・マンへの挑戦が叶うことにとても嬉しい気持ちです」

佐藤「マクラーレンのシートのオファーも突然いただいことで、ル・マンももちろんですが、WECのフルシーズンに挑戦が叶い、僕にとっての新しいレースの世界が待っています」

――佐藤選手がいままで参戦していたFIA F2やLMP2にはBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)というものはなく、気にすることもなかったかと思いますが、GT3マシンにはそれがあり各マニファクチャーにとってはレースを左右する重要なポイントのひとつでもありますね。

佐藤「マクラーレンとしてもGT3で初めてのWEC/ル・マン参戦となります。センサー類も今季のマシンは変更点が多くありますのでBoPの行方は気になるところですね」

佐藤「すでに発行されているBoPのリストは見ていますが、プロローグでの走行後には変更になる予定ですので、まずはプロローグではマシンの感触をしっかり確かめながら走りますが、僕にとってもチームにとってもまだどうなるかはまったく予想がつかないというのが今の感じでしょうか」

佐藤万璃音がドライブするユナイテッド・オートスポーツの95号車マクラーレン720S GT3エボ。カーナンバーの「95」はマクラーレンF1 GTRの優勝年である1995年に由来する

――ル・マンではヨーロッパのレースの経験豊富なベテランジェントルマンドライバーの濱口弘選手と組んでの参戦となりますね。

佐藤「事前にチームからは聞いておらず、オフィシャルのプレスリリースで発表される直前に、濱口選手から『ル・マンでは一緒にドライブするのでよろしくね!』と直接ご連絡を頂いてとても驚きました」

佐藤「濱口選手はル・マンの経験も豊富でとても速いブロンズドライバーなので、チームメイトとして一緒にル・マンを走る日をとても楽しみにしています」

――今季の佐藤選手の活動は?

佐藤「WEC(LMGT3クラス)とELMS(LMP2)の両シリーズをフル参戦します。僕にとって、まさしく新しい世界へ飛び込むことになり忙しくもなりますが、充実した一年になると思いますし、この挑戦をとても楽しみにしています」

佐藤「とくに9月に開催されるWECの富士スピードウェイ戦は、僕にとって初めての日本でのレースになりますし、ヨーロッパのレースとは違うレースの雰囲気を楽しみにしています」

佐藤万璃音が着用する日の丸入りのレーシングシューズ

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 強豪スポーツカーチームのユナイテッド・オートスポーツ、そして名門マクラーレンからも期待され、95号車の“プロドライバー”として起用されることになった佐藤万璃音。2023年はELMSでランキング2位の好成績を収めた彼が、ジェントルマンドライバーのジョシュ・ケイギル、弱冠19歳のニコ・ピノというチームメイトとともに挑むWECプログラムの初年度にどんな活躍を見せてくれるのか。まずはプロローグでの走りに注目したいところだ。

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