磐田のスタメン、ベンチ入りを巡る充実の競争力。横内監督は「序列は変えていけるもの、変えていかなきゃいけない」

2月24日にホームで行なわれたJ1開幕戦で、昨シーズンのJ1王者であるヴィッセル神戸に0-2で敗れたジュビロ磐田。翌日にはJ2の藤枝MYFCと45×2本の練習試合が行なわれ、雨模様のなか、開幕戦でスタメンに入れなかった選手たちが、活気のあるパフォーマンスで次節以降の出場に向けてアピールした。

「いいでしょ。本当に良い競争で今、ここまで来ているので。僕も今日観ていて、寒かったですけど時間が経つの、早かったですね」

横内昭展監督も嬉しそうに振り返った。神戸戦で途中出場だったMF中村駿やDF西久保駿介が1本目でプレー。ベンチ入りはしたものの、出番がなかった21歳のDF鈴木海音がキャプテンマークを巻いて、ディフェンスラインを統率した。

前日にV・ファーレン長崎と0-0で引き分けた藤枝も、終盤に惜しいシュートを放ったFW中島大嘉を中心に、磐田のゴールに迫るシーンが目立ち、お互いがアグレッシブなプレーを見せた。

合計スコアは磐田が3-2と勝利したゲームで、90分フル出場の選手もいれば、2本目から入った選手もいるが、怪我から回復途中の選手を除くトップチームの全選手がプレーした。

1本目に得点したFWウェベルトン、右サイドからの果敢な仕掛けでチャンスを作ったMFブルーノ・ジョゼなど、神戸戦ではベンチ入りしなかった新加入選手もそれぞれが武器を出していた。

若手選手ではトップ昇格3年目となるMF藤原健介も、ボランチで1本目、2本目で違う選手と組みながら、CKのキッカーとしてゴールを演出するなど、大津祐樹氏から引き継いだ77番を背に、ギラギラしたプレーを見せていた。

特にボランチのポジション争いは熾烈で、神戸戦にスタメンで出た上原力也とレオ・ゴメスも“絶対”というわけではない。後半途中からレオ・ゴメスに代わり投入された中村も昨シーズンは福岡で、怪我をするまでの前半戦は中盤の主力を担っていた実力者だ。

神戸戦を指標とすれば、彼らもここから、さらに強度やクオリティを上げていかいと、J1で戦い抜く支えになることは難しい。そこに藤原や、J2の昨シーズンは中盤の主力だった鹿沼直生などが、どう絡んでいくのか。

その鹿沼は練習試合の1本目は左サイドバック、2本目でボランチを担い、チームの2点目を記録した。

昨年も鹿沼は怪我人が出たセンターバックで起用されて、そこからアピールしてボランチの主力を掴んだ。「他のポジションやることで、ピッチに立つチャンスが増える。この先のサッカー人生を考えても、1つでも多くのポジションでできるのはプラスに捉えて、少しでも能力を上げるためにやっていきたい」と前向きに取り組んでいる。

そして本来のボランチにポジションを移した2本目にゴールという結果を出したことは、横内監督も前向きに評価しているはずだ。

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カテゴリーがJ1に上がり、15人の新戦力が加わった今シーズン。キャンプの最初のうちは「まっさらな状態です」と語っていた横内監督だが、試合の2日前に告げたという開幕戦のスタメンはそこまでの総合的な評価として出した結論だ。

しかし、ここから先に向けては「序列というのは変えていけるものだし、その選手たちが変えていかなきゃいけない」と語り、そうした競争もセットで、神戸戦で出た課題に向き合っていく姿勢を示した。

前回王者の神戸が相手とはいえ、ホームの開幕戦を落としたことは当然ながら痛い。ただ、前向きに捉えれば、ここからの戦いに向けて良い教訓を与えられたことは間違いない。

次節の相手、川崎フロンターレも過去7シーズンで7つのタイトルを獲得し、昨年はリーグ戦こそ8位だったが、天皇杯で優勝。今シーズンは巻き返しに向けて効果的な補強を行ない、湘南との開幕戦は新外国人のエリソンの得点などで、アウェーで2-1の勝利を飾っている。

スタートから神戸、川崎と立て続けに厳しい相手となる磐田だが、横内監督は神戸戦で失った勝点3と引き換えに得た教訓を糧に、「この借りをいっぺんに返すことはできないかもしれないですけど、残り37試合で少しづつ返していきたい」と語った。

そこにどの選手がどう絡んでチームを勝利に導くのか。まずは川崎戦のスタメンとベンチメンバー18人に注目したい。

取材・文●河治良幸

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