サウジ開催は3日前に正式決定…異例の過酷移動を強いられた熊谷紗希「そのテーマは全部終わってから。何を言ってもやるしかない」

なでしこジャパンは2月28日、パリ五輪最終予選の第2戦で北朝鮮と国立競技場で戦う。中立地のサウジアラビアで行なった第1戦は0-0でドロー。最終決戦で勝った方が大舞台の切符を掴む、非常に分かりやすい構図だ。

キャプテンの熊谷紗希(ローマ)は、サウジアラビアから帰国した26日の練習後に取材に対応。まず、押し込まれながらも無失点で耐え抜いた第1戦を振り返り、こう語った。

「結果として負けなくて良かった。もちろん勝って帰ってきたかったけど、暑さ、厳しい(条件の)なか、負けなかったことは大きい。試合を通してでは、後半にすごく押し込まれた時に、自分たちの立ち位置というか、ミスマッチななか押し込まれたところを修正できなかったのは反省点。ただ、2戦目があるので修正して臨める。戦い方を再度確認して、戦えることはプラスかな」

第1戦の開催地は直前で平壌から未定となり、試合の3日前にようやくサウジアラビアに正式決定。その割を食った熊谷は数日の間に、所属クラブのあるイタリアから日本、日本からサウジアラビア、そしてサウジアラビアから日本と長距離フライトを強いられた。

「(コンディション調整は)簡単じゃない(笑)。だけど、そんなことは言っていられない。こうなった経緯とか、色んなことがあるけど、やるしかないので、とにかく良い準備をする。暑いよりは寒い方がまだ身体は動くと思うので、しっかり良い準備をして戦いたい。勝った方が行けるシンプルな状況になっているので、勝つためにやるべきことをやるだけかなと」

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チャンピオンズリーグ5連覇など、あらゆる経験をしている33歳の主将にとっても、今回のドタバタ劇は異例中の異例。思うところはたくさんあるが、兎にも角にも、目の前の敵を倒すことが最優先だ。

「そのテーマは全部終わってから。今後こんなことがないようにできたらいいとは思っているけど、本当に何を言ってもやるしかないので(笑)。まずは試合に集中して戦いたい。

(初戦から)やり方を変える云々ではなく、勝たなきゃいけないので、そんなことを考えることもしなくていいのかなと。もちろん初戦は、場所が北朝鮮だったらとか、負けないことがとか、色々あったと思うけど…今この状況を見たら、そんなことを考えるんじゃなくて、勝つことだけを考えて戦わないと。勝つためには点が必要だし、失点しちゃいけない。本当にシンプルなので、チームが勝つためにできることを考えたいと思っている」

リオ五輪予選敗退も経験した熊谷は、「女子サッカーの未来のためにも、世界で戦うなでしこをみんなに見てもらえる機会を絶対に逃しちゃいけない」と確固たる決意を示す。国立での北朝鮮戦は、なでしこジャパンの今後を左右すると言っても過言ではない、天下分け目の一戦だ。

取材・文●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)

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