日本初の盲ろう者トライアスロン選手「サポートあれば、できることたくさん」 京都・亀岡で講演

トライアスロンのスイムについて手話で説明する中田さん(左)=亀岡市内丸町・市総合福祉センター

 日本初の盲ろう者トライアスロン選手として活躍する中田鈴子さん(57)=京都府木津川市=の講演会が、京都府亀岡市内丸町の市総合福祉センターであった。嫌いな長距離走や苦手な泳ぎを克服してこれまで48回完走したことを振り返り「サポートがあれば、できることはたくさんある」とチャレンジできる環境の大切さを訴えた。

 中田さんは手話で、「生まれつき耳が聞こえず、弱視も進行し、29歳で車の運転ができなくなった」と説明。現在はほとんど見えないが、京田辺市の障害者就労支援事業所「さんさん山城」で働き、無理だと言われた茶の新芽摘みや職員よりも手際よいタカノツメの軸取りなどを例にして日常を紹介した。包丁でタマネギをテンポ良く切る動画も流した。

 トライアスロンのきっかけは、病気がちだったのを治そうと、医師の勧めで45歳で始めたマラソン。「授業をサボるぐらい長距離は大嫌いだった」が、3キロから始め、100キロマラソンを完走するまでになったという。

 47歳でトライアスロンに挑戦。スイムは「海の香りは好きだったが、全く泳げなかった」と驚かせた。バイクも視覚障害者と同様にガイドが前に座る2人乗り自転車を使うが、言葉でのやりとりができないため、ハンドルに取り付けたボタンで振動の合図を送り合っているとした。

 新たに支援を得てボルダリングを始めたと明かし「障害者はチャレンジする機会すら与えられないことが多い。周囲は無理、できないと止めるのではなく、とりあえずやってみようと言ってあげてほしい」と求めた。

 講演は22日、亀岡市内の聴覚障害者が学習、交流する「かめの会」で開かれ、約40人が参加。手話の通訳、スライドの文字や写真で視聴覚に障害がある人も理解できるようにした。

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