焦点:トランプ氏、「党団結」は程遠く 予備選連勝も本選に不安

(記事の体裁を整えました)

James Oliphant Nathan Layne

[ワシントン 26日 ロイター] - トランプ前大統領は11月の米大統領選に向けた共和党予備選で指名獲得に向けて着実に歩を進めているが、同氏の発言とは裏腹に党内は団結には程遠い状況で、バイデン大統領と本選で対決する場合に必要になり得る有権者の支持を確保できていない。

24日のサウスカロライナ州予備選では、対抗馬のヘイリー元国連大使が予想以上に健闘し、特に伝統的な共和党員や穏健派の支持を集めた。

一部の専門家によると、こうした有権者は移民などを巡るトランプ氏の強硬な政策や人種差別的な発言に嫌悪感をより感じやすいとみられる。複数の刑事訴訟を抱える同氏が有罪となった場合も、一部の有権者が支持を見合わせる可能性がある。

トランプ氏は最近、移民が米国の「血を汚している」と発言。週末には複数の刑事事件で起訴された自身を黒人有権者に重ね合わせ、批判を浴びた。

ヘイリー氏はサウスカロライナ州予備選で約40%の票を獲得。先月のニューハンプシャー州予備選でも得票率が約43%に達した。無党派層のほか、トランプ氏の指名獲得を阻むため共和党予備選に参加した一部の民主党員の支持に支えられた。

ヘイリー氏は多くの共和党員がトランプ氏を拒否しているとし、今後も選挙戦を継続する方針を表明。ヘイリー氏の陣営によると、サウスカロライナ州予備選の敗北後に新たに100万ドルの献金を集めた。

2020年大統領選でトランプ氏に勝利したバイデン氏は、地方の有権者より穏健派が多い郊外地域で白人有権者の支持を集めた。無党派層の支持も54%と、トランプ氏の41%を大幅に上回っており、ミレニアル世代やX世代でもバイデン氏の人気が高い。

こうした有権者がサウスカロライナ州とニューハンプシャー州の予備選でヘイリー氏に投票したが、ヘイリー氏の離脱後にトランプ氏がそれらの層を取り込めるかが問題になる。

共和党のストラテジスト、デーブ・ウィルソン氏は「サウスカロライナ州が全米の縮図だとすれば、他の州でそうした有権者を取り込むため多くのアピールが必要になる」と述べた。

トランプ氏は今のところ、こうした有権者を取り込むため、発言を修正することには関心がないようだ。選挙陣営も問題視していないように見える。

同氏はサウスカロライナ州の予備選後、「共和党がこれほど団結しているのは見たことがない」と発言。選挙陣営もヘイリー氏の得票率について「リベラル民主党員」が支持する候補だと一蹴している。

トランプ氏はここ数カ月、移民・外交政策で保守系支持者が好む強硬姿勢を一貫して打ち出し、予備選で連勝してきた。

だが、本選の有権者は共和党予備選の有権者とは大きく異なる。

ロイター/イプソスの今月の世論調査によると、トランプ氏の支持率は37%で、バイデン氏の34%を上回っているが、22%は「別の候補が望ましい」もしくは「投票しない」と回答。こうした有権者は投票日当日まで態度を決めかねる可能性が高い。

ウィルソン氏は、トランプ氏が世論を二分する好戦的な発言を修正することはできないと指摘。

「ドナルド・トランプにメッセージの修正や自分を変えることを求めるのは、ドナルド・トランプ以外の人物になれということだ。そんなことはしないだろう」と指摘。「ただ、別のスタイルの大統領を求めている別の有権者グループもいる」と述べた。

エジソン・リサーチが実施した出口調査によると、大卒者の間ではトランプ氏よりもヘイリー氏の支持率が高かった。穏健派を自称する有権者の70%はヘイリー氏を支持している。

ウィンスロップ大学のアドルファス・ベルク教授(政治学)は、こうした有権者が21年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件を巡ってトランプ氏を批判する可能性が特に高いとし、「事件を忘れられない穏健派の有権者がいるため、トランプ氏は本選で課題を抱えるだろう」と述べた。

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