【アバター実証実験】訪日客接客の一手に(2月27日)

 会津若松市の東山温泉旅館「御宿東鳳」と鶴ケ城でオンライン接客サービスの実証実験が進められている。市内の温泉宿泊施設では、新型コロナ禍前を上回る勢いでインバウンド(訪日客)が増えている。観光人材の確保が課題となる中、デジタル技術を活用し、さらなる誘客につなげてほしい。

 実証実験は、御宿東鳳を運営するオリックス・ホテルマネジメント(本社・東京都)と市が3月17日まで実施している。モニターやスマートフォンに接客スタッフの分身「アバター」を投影し、利用者の問いかけに即時に答える仕組みだ。御宿東鳳のラウンジとカウンター、鶴ケ城のミュージアムショップにモニターを設置し、鶴ケ城本丸入り口にはスマホで利用できるQRコードを掲示している。

 アバターは接客スタッフの動きや表情を反映し、和やかな受け答えをできるのが特徴で、会津若松駅観光案内所の職員が観光全般、御宿東鳳の社員が旅館内を遠隔で案内している。スタッフ側は顔や声が伏せられ、年齢や性別を問わずに業務に当たれる。場所を選ばずに仕事ができるため、新たな労働力の掘り起こしや柔軟な働き方の提案にもつながると期待される。

 市内の東山温泉と芦ノ牧温泉に宿泊した昨年1年間の訪日客は1万6962人(速報値)で、コロナ禍前の2019年の1万44人と比べて約7千人増えている。国・地域別では、台湾が7613人と最も多い。次いでタイ2975人、欧米1680人などの順で、台湾と欧米の伸びが目立つ。欧米から一層の誘客を図るには、英語での接客対応の充実が求められる。

 一方で、対応できる人材を宿泊施設や観光施設が単独で確保するのは容易ではないという。遠隔システムを使って1人で複数施設の接客ができれば、効率的だし、それぞれの施設の負担も軽減されるだろう。

 観光業でも、さらなる人手不足が懸念されている。課題解決にはデジタル技術の活用は欠かせない。市は今回の実証結果を踏まえ、新年度は市内7カ所の観光地にQRコードを掲示し、訪日客の観光案内などに生かす方針だ。市内観光に関する質問や相談に迅速に対応できる体制づくりを期待したい。(紺野正人)

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