山形の「救急JAPAN」、被災者搬送に尽力 能登半島地震・雪道運転、強み発揮

被災地で医療機関などに高齢者らを搬送した支援活動=石川県金沢市(救急JAPAN提供)

 本県で唯一「民間救急車」を運用する一般社団法人「救急JAPAN」(山形市)が、能登半島地震の被災地で、医療的なケアが必要な被災者を医療機関や、より安全な避難先に搬送する活動を展開した。代表理事の木村祐人さん(37)は、依然として寒さも厳しく、現地の避難所では十分なケアができない状況だったと振り返り、「雪道の運転などで山形の強みを生かし、力を尽くせた」と話した。

 救急JAPANは、現地の災害派遣医療チーム(DMAT)調整本部から派遣要請を受けた一般社団法人「全民救患者搬送協会」の協力依頼で、先月13~23日の間、救急救命士の資格を持つ木村さんと、救急JAPANの隊員2人が活動。DMATや自衛隊と連携し、緊急性は低いものの医療的なケアが必要な被災者を、避難所より安全で設備の整った金沢市内などへ搬送した。

 「現地は想像の何倍も悲惨な状況だった」と木村さんは振り返る。がれきの山、寸断した道路。下敷きになった行方不明者が助け出されていない倒壊家屋もあった。孤立した高齢者施設では物資が十分に行き届いておらず、たんの吸引用の医療器具は断水で洗浄できず、衛生環境は悪化しているようだった。

 土砂崩れや降雪で道路の状態は劣悪だった。救急JAPANのメンバーは、多い日には10人ほどの搬送に携わった。雪に苦労する他県のドライバーには、雪道の走行をアドバイスし、本県チームの強みも生かすことができたという。民間救急車は装備こそ、消防機関と遜色ないが、緊急車両扱いではない。通行規制は日々変わり、天候にも左右され、通れる道路も変わるなど、想定外の事態が次々と起きたという。

 新型コロナウイルス感染者の搬送経験もある木村さんには、発熱患者の搬送方法で現地の医療スタッフから助言を求められた。「今回の活動で自分たちの力を認めてもらえた」と木村さん。民間救急の仲間との交流やノウハウの共有にもつながり、「万が一の際、全国から民間救急が出動し助け合えるネットワークができた」と成果を語った。

© 株式会社山形新聞社