U-17W杯で4戦4発の離れ技から4か月後――プロ注目の高岡伶颯が掲げた目標「全国の舞台でも代表でも、ぶっちぎれるように」

今から4か月前、日章学園のFW高岡伶颯(2年)はインドネシアにいた。U-17ワールドカップの舞台で躍動したのは記憶に新しい。

グループステージ初戦のポーランド戦(1-0)で途中出場ながら後半に決勝点を奪うと、続くアルゼンチン戦(1-3)でもネットを揺らす。セネガルとの最終戦(2-0)でも2ゴール。ラウンド16のスペイン戦(1-2)では無得点に終わったが、日本の懐刀として世界にその名を知らしめた。

大会前はそれほど注目をされておらず、同郷のFW名和田我空(神村学園/2年)のほうが知名度は上。国内ではJクラブから興味を示されていたが、“ドラフト1位クラス”ではなかった。

しかし、W杯での大活躍で状況は一変。昨年12月末から行なわれた高校サッカー選手権では注目選手のひとりとして期待され、多くのJクラブからも熱視線を送られる存在に。

となると、環境の変化で自分の立場を勘違いしても不思議ではない。そんな選手は少なくないが、高岡は周りに惑わされず、淡々と新シーズンに向けて準備を進めている。

「今年の目標は、ぶっちぎる力を身につけること。九州でも全国の舞台でも代表でも海外でも、ぶっちぎれるようになりたい。それが今の自分の目標」

欲しいのは圧倒的な力――。今季はU-18高円宮杯プレミアリーグのひとつ下のカテゴリー、プリンスリーグ九州1部でプレーするだけに、求められる数字やパフォーマンスの指標は他の選手よりも高くなる。

前田大然を彷彿させる迫力満点のプレッシングと、左右の足から放たれる強烈なシュートを武器に、どこまで期待に応えられるか。相手からのマークも厳しくなるだけに、どんな状況でも局面を打開するプレーも求められる。

そうした状況下で高岡は、2月17日から20日まで行なわれた九州新人戦の前に新たな刺激を受けた。Jクラブの練習参加だ。

去年もすでに何度か参加していたが、1月下旬から2月上旬にかけて、複数のJ1クラブでトレーニングを経験。キャンプに帯同し、浦和、横浜、鹿島の3クラブで研鑽を積んだ。

そこで得た学びは何事にも変え難い財産。特に衝撃を受けたのが、長年日本サッカー界を牽引してきたレジェンドたちだ。

鹿島では柴崎岳と鈴木優磨に魅せられたという。

「柴崎さんはキックの質が違う。余裕もあるし、ボールを取られる気配がない。そして、常に僕を見てくれているので、動き出せばボールが出てくる。優磨さんは試合中だけは怖かったですけど、ボールを収める技術が高かった。身体の使い方がとにかく上手で、これは日章学園に戻ったら取り入れたいと思いました」

海外で長くプレーしていた鹿島の10番とチームを牽引するストライカーとプレーし、世界で戦うための基準を知ることができた。

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浦和では酒井宏樹に驚かされた。同時期に参加した名和田も酒井のタックルに舌を巻いていたが、高岡も同様の感想を持ったという。

「海外基準のスライディング。若い頃にブラジルに留学していたからかもしれませんが、とにかく質が高い。音が違っていて、“ガリ”、“ゴリ”って鳴るぐらいで。上から乗ってくるような迫力があって凄かったです」

ノーファウルで深く抉ってくるタックルは、高校年代ではなかなかお目にかかれない。そうした体験ができたことは、今後のキャリアを考えれば間違いなくプラスになった。

また、GK西川周作にも刺激を受けたという。

「あの人に僕は1対1を止められまくった。もちろん多少は決められたけど、本当に凄い。トップトップの選手と戦えて幸せだった」

上には上がいる――。こうした経験が原動力となり、高岡をさらなる高みへと導く。2月20日に幕を閉じた九州新人戦では、高校選抜の活動があった影響で決勝トーナメントからチームに合流すると、持ち前の豊富な運動量を武器にチームを3位に導く活躍を見せた。ただ、プロの世界を知った高岡は現状に満足していない。

今年は進路を決めるだけではなく、U-20ワールドカップの1次予選に相当するU-20アジアカップ予選も秋に控えている。世界に再び打って出るべく、技を磨いてどこまでレベルアップを果たせるか。

日章学園ではキャリア初のキャプテンに就任し、日本一のためにやるべきことは多い。代表でも自チームでもやるべきことは山ほどある。持ち前の明るさと積極的にトライする姿勢は今も昔も変わらない。注目を集めるアタッカーの一挙手一投足に今後も注目だ。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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