TVアニメ『魔女と野獣』は『鋼の錬金術師』ファン必見 ダークで“美しすぎる作画”を解説

ディズニー・アニメーションの名作『美女と野獣』は美女を中心に物語が展開されるが、圧倒的な存在感を放つ“美しい野獣”が物語を牽引する作品が存在する。現在放送中のTVアニメ『魔女と野獣』だ。本作は、映画監督のギレルモ・デル・トロやティム・バートンらが描くダークファンタジーの要素を彷彿とさせる重厚な世界観を持ち合わせており、精緻な作り込みは、ハイクオリティな作品が並ぶ最近のアニメーション作品の中でも際立っている。

原作は佐竹幸典の同名漫画で、繊細な線画のエッセンスを活かして描かれる洗練されたアクションシーンが大きな魅力だ。優雅で美しいだけでない、まさに“破壊力抜群”の力強いアクションは、視聴者を深く『魔女と野獣』の世界へ引き込む。

原作ファンからも熱烈な支持を得ている本作。これまでに放送された6話までの中から、その壮麗なアクションシーンを紹介したい。

■第1話から圧倒される“美しすぎる戦闘”

『魔女と野獣』は、魔女の呪いを受けた少女・ギドがその呪いを解くため、特定の魔女を探して旅をする物語だ。野獣のような鋭い眼差しを持つギドと魔術師アシャフの旅路では、様々な魔女が彼女たちの前に現れる。しかし、2人が真に求める“獲物”が目の前に立ちはだかる魔女なのかは定かではない。

物語の幕開けを告げる第1話「魔女と紅蓮の街」は、本作における“美しすぎる戦闘”を深く印象付ける。主人公ギドと彼の仲間アシャフがたどり着いたのは、「魔女・イオーネ」が支配する街だ。ここでのギドとイオーネの戦いは、「人間とは異なる存在」同士の対決の序章を飾る。

そこで描かれたのは、花びらが舞う中で展開される激しい戦闘を通じて、ギドがどのようにして「美しくも恐ろしい」魔女の強大な敵であるかだ。ギドの“変化”によって、私たちは彼女の強さに納得させられる。

一方で、イオーネの儚い「散り際」の作画も素晴らしい。彼女の最後の表情はスローで描かれ、生への名残惜しさを漂わせるように戦いの幕引きを美しく演出している。

■第3話の名シーンを際立たせた「フレーム」の演出

第2話から第3話では「魔女の戯れ」と題したエピソードが展開され、魔本を巡る敵との戦闘が中心となる。日常の静けさに飽きていたギドは、教団から届いた一通の黒い封筒を手に、急遽ハイデンへと赴くことに。彼らが向かった先では、魔女が起こしたと思われる一連の連続殺人事件が発生しており、これらの事件には魔本が深く関与していることが判明する。

注目すべきは、敵が操る紫色の煙を描いたバトルシーンだ。同じ魔女ではイオーネとの戦いでは開けた空間に舞う花びらの数々が印象的だった一方で、次の戦いで強調されるのは煙による“視界の悪さ”。しかもただの煙とは異なり、質量を感じさせるような勢いで画面に迫ってくる。こうした、毎回壮麗でありながらパターンの違う敵との戦闘描写は、我々視聴者の心を踊らせる。

また、バトルシーンだけでなく、本作では重要な瞬間に画面を囲む「フレーム」が効果的に使用されている。特に第3話の、ヘインスが「愛したり愛されたり、そんな当たり前のことを」と息子と過ごした幸せな時間を思い出す名シーン。ここでのフレームの使い方は、大切な記憶を切り取るような繊細な表現であり、ただの装飾以上の意味を感じさせた。

■暴力的なシーンにも感じる芸術的な美

さらに、ギドやアシャフ以外のキャラクターに焦点を当てた戦闘シーンも、物語の魅力の一つだ。第4話と第5話に渡って描かれる「美と死」では、死屍人を相手にした過激な戦いが展開される。アシャフの推薦により、死屍人事件を解決するために派遣されたのは、魔響教団の死霊魔術師ファノーラとその助手ヨハン。ファノーラが、違法に蘇らされた「野良」の死屍人をおびき出すと、予想を大幅に超える数の死屍人が現れる。

第5話では、ファノーラに忠誠を誓う死霊騎士たちの初めての戦闘シーンが描かれる。召喚の後、他のシーンとは異なるタッチで描かれたファノーラと騎士たちを中心に据えたカットが挟まれているが、その冷たい美しさはまるでファノーラ自身の魅力そのものを象徴しているかのよう。

ファノーラが召喚した死霊騎士たちは、死屍人を次々と撃退していく。暴力的なシーンにもかかわらず、皮膚を覆う呪文の文字や影から現れる死霊騎士たちに一種の芸術的な美を感じさせるから不思議だ。TVアニメ『魔女と野獣』の徹底した作画へのこだわりが、そう感じさせるのだろう。

■「魔剣篇」では新キャラのマット・クーガの素顔に期待

そして第6話からは魔剣篇がスタート。持ち主に力をもたらす最強の剣の登場により、アクションはさらに磨きがかかってくるだろう。筆者が最も楽しみにしているのは、魔女狩りのエキスパート集団「聖騎士団」を率いるマット・クーガの素顔が見られることだ。マスクの下に隠された“美”を堪能できるのは、2月29日に放送される第7話以降であり、待ち遠しい。

なお、現在予約受付が開始されているBlu-rayには、店舗別購入特典として、原作者佐竹先生による“描き下ろしイラスト”を使用したグッズが付属するとのこと。ファンにとっては永久保存版として持っておきたいアイテムだろう。

原作ファンであれば、TVアニメ版『魔女と野獣』は間違いなく歓喜する仕上がりだ。そして見応えあるアクションのおかげで男女問わず広く楽しめる作品であることは間違いないので、未見の方は今すぐイッキ観していただきたい。また、同種の雰囲気を持つTVアニメ『黒執事』や『鋼の錬金術師』のファンも必見だ。ギドたちの“秘密”の全貌が明らかになる日が楽しみだ。
(文=すなくじら)

© 株式会社blueprint