豪州上陸の『フォード・パフォーマンス・スーパーバン4.2』が伝統のマウントパノラマでEVラップレコードを樹立

 オーストラリア最高峰の“ハコ車”選手権、RSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップの2024年開幕戦『スリフティ・バサースト500』が開催された2月24~25日の週末に、同国の“聖地”には北米フォード・パフォーマンスと新興STARDが共同開発したフル電動モンスターEV『Ford Performance SuperVan 4.2(フォード・パフォーマンス・スーパーバン4.2)』が初上陸。おなじみロマン・デュマのドライブでマウントパノラマを史上最速で周回したEVクローズドホイール車として、1分56秒3247という新記録を樹立した。

 昨季で第101回大会を迎えた通称“Race to the Clouds(雲に向かうレース)”こと2023年PPIHCパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムに向け、フォードの高性能モデル開発とモータースポーツ活動を担うフォード・パフォーマンスが製作したフォード・パフォーマンス・スーパーバン4.2は、合計3つのモーターによりシステム出力1050kW(約1400PS)のパワーを誇る。

 そんな“怪物EVバン”は、特徴的なカーボンコンポジット製ボディとFIA仕様のロールケージ、調整可能な回生ブレーキを備えた全輪駆動のパッケージをフルに活用し、さらにウエイトレシオ改善のため4モーターから3モーターに減らした改良も功を奏して8分47秒682を記録してPPIHCのオープン部門を制覇。しかし全体では2番手と惜しくも総合優勝を逃す結果となっていた。

 そのモンスターEVバンが次に狙いを定めたのは南半球の“聖地”で、同地が誇るRSC開幕戦のイベント会期中に運び込まれたフォード・パフォーマンス・スーパーバン4.2は、世界中の名所で“レコード請負人”として活躍を演じるデュマのドライブにより、全長6.2kmの“ザ・マウンテン”で最速の電動クローズドホイール車両のベンチマークタイムを記録。マウンテンとコンロッドの両ストレートでは時速300km/h(186マイル)以上の最高速度を叩き出し、同地でBoP性能調整を解放したメルセデスAMG GT3エボの持つレコード上回る、1分56秒3247という驚異的なタイムで周回した。

「これは電気自動車の新時代の到来を告げるものであり、ここマウントパノラマでクローズドホイールのベンチマーク・ラップタイムをリセットするのに要した努力と専門知識は、決して過小評価することはできない」と語るのは、おなじみフォード・パフォーマンスのグローバルディレクターを務めるマーク・ラッシュブルック。

RSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップの2024年開幕戦『スリフティ・バサースト500』開催の約2週間前から現地テストを重ねてきた
そのアタックは2023年のPPIHCでも同車のステアリングを握った“レコードブレイク請負人”ことロマン・デュマが務めた
その『フォード・パフォーマンス・スーパーバン4.2』は合計3つのモーターによりシステム出力1050kW(約1400PS)のパワーを誇る

■車両重量1800kgの“怪物EVバン”はF1オーストラリアGPにも登場予定

「ロマン・デュマは我々のチームと協力して革新、学習、適応に取り組み、その結果、自身やチームの予想を超えるタイムが得られた。パイクスピークの後に、こうしてマウントパノラマにスーパーバン4.2を持ち込むことを選んだのには理由がある。世界中で“これに匹敵する場所はない”というね」

 そのPPIHC総合記録保持者として挑んだデュマも「どちらもそれ自体が印象的な山だが、マウントパノラマとパイクスはその課題において、これ以上に異なるものはないと言える」と、その苦労を振り返った。

「このスーパーバン4.2を300km/hを超える速度でドライブしたのはこれが初めてだが、言うまでもなく可能な限り最速のラップを目指して全力を尽くした。これまでにスーパーバン4.2のようなEV車両をマウントパノラマでドライブした人物は誰もいないし、これほど速く走ったEVも確かにないだろう」

 車両重量はほぼ1800kgとなり、全高はGT3車両の優に2倍はあろうかという巨体を持つスーパーバン4.2だが、フォード・パフォーマンスのF1およびEVデモンストレーター担当マネージャーのスリラム・パッカムは「開発チームは2週間にわたり、この電動バンをできるだけ速く走らせるための取り組みをやめなかった」と続けた。

「このスーパーバン4.2が可能な限り高性能であることを証明するべく、世界的なフォード・パフォーマンスネットワークがアクティブ化された。そのおかげで、我々はこの挑戦的なマウントパノラマで能力を向上させ、セッションごとにラップタイムを短縮する多くの重要な変更を実装することができたんだ」

 テスト期間を含め2週間の走行期間を経て、フォード・オーストラリアの社長兼最高経営責任者(CEO)を務めるアンドリュー・バーキッチも「このスーパーバン4.2は実際に見ないと信じられない」と語り、電動化された未来を「垣間見ることができた」とクルマのパフォーマンスを賞賛した。

「オーストラリアのレースファンがマウントパノラマの周囲を走るその歴史を目撃できたことに、我々も興奮している。この走行から学んだ教訓は、フォードの次世代電気自動車にこの性能が直接反映されるだろうということ。つまり、公道を走行する将来の製品には、マウントパノラマの精神が少しだけ組み込まれることになる、ということだね!」

 このフォード・パフォーマンス・スーパーバン4.2は、今後RSCの第2戦となるアデレード・モータースポーツ・フェスティバルと、F1オーストラリアGPにも登場する予定となっている。

マウンテンとコンロッドの両ストレートでは時速300km/h(186マイル)以上の最高速度を叩き出した
「ロマン・デュマは我々のチームと協力して革新、学習、適応に取り組み、その結果、自身やチームの予想を超えるタイムが得られた」とマーク・ラッシュブルック(右)
今後RSCの第2戦となるアデレード・モータースポーツ・フェスティバルと、F1オーストラリアGPにも登場する予定となっている

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