「任天堂の直接雇用拒否は不合理と言えず」保健師女性2人の請求棄却 京都地裁、産業医のパワハラは一部認定

京都地裁

 任天堂(京都市南区)で正社員などの直接雇用につながる「紹介予定派遣」として働いていた保健師の女性2人が、産業医からパワーハラスメントを受けた上、直接雇用を不当に拒否されたとして、社員としての地位確認と損害賠償を求めた訴訟の判決が27日、京都地裁であった。齋藤聡裁判長は「直接雇用の拒否は不合理とは言えない」とし、地位確認の請求を棄却した。一方、パワハラの一部を認定し、会社側に20万円の賠償を命じた。

 判決によると、2人は紹介予定派遣として2018年4月から任天堂で勤務。しかし同年9月に「産業医と協力体制が構築できなかった」ことを理由に直接雇用の拒否を通知された。

 紹介予定派遣は、派遣期間の終了後、本人と派遣先が合意すれば、直接雇用される労働者派遣法に基づく制度。ミスマッチを減らし、安定的な直接雇用につながるメリットがある。

 齋藤裁判長は判決理由で、紹介予定派遣について「直接雇用に至らない場合があることを制度上当然の前提としている」などと指摘。直接雇用に対する原告の期待は、法的保護に値するとまでは言えないとした。

 その上で、上司に当たる産業医から無視されるなどのパワハラはあったものの、協力体制が構築できなかった原因の一端は原告にもあるとし、「(任天堂が)直接雇用しなかったとしても、ただちに不合理とは言えない」と判断した。

 判決を受け、会見した原告の40代女性は「ハラスメントが認められたのは素直にうれしいが、雇用拒否の不当さが全く認められなかったのは残念」と話した。任天堂は「主張が一部認められなかった点は遺憾です」とコメントした。

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