首だ(2月28日)

 いずれ死語になると言われたら、どんな言葉を思い浮かべるだろう。「首になる、首にする」も候補では。人手不足で猫の手も借りたい昨今だ。安易に雇い止めなどできない。会社の首をつなぐために▼それにしても、首とは穏やかな単語でない。武士の時代の名残だろうか。広辞苑に当たると、「斬首」が免官、免職、解雇に意味を広げたと想像がつく。英語で「お前は首だ」は「ユアー・ファイヤード」。「火を付けられた」とも訳せよう。銃管に従業員を詰め、発射するイメージが由来との解説もある。西洋では、刀がピストルに代わったようだ▼ライバルのバイデン氏に、「お前は首だ」と言い放った。米大統領への返り咲きを目指すトランプ氏。共和党の候補者指名争いで連勝を続けている。自国優先を貫く。権力の座に復帰して、仮に関税を上げる策に出れば日本経済に冷水となる。選挙の動向に気をもむ県民もおられよう▼勢いづくお方の足元には火種も。訴訟の費用がかさんでいると伝わる。金策では首が回らず、お尻に火がついているのか。選挙はさておき、米国は世界融和の号砲を「ファイヤ」してもらわねば。「民主大国」が死語とならぬよう。<2024.2・28>

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