再生利用「政治主導で」 自民復興加速化本部 政府へ提言案 除染土壌の福島県外最終処分

 自民党東日本大震災復興加速化本部は東京電力福島第1原発事故に伴う除染で出た土壌の福島県外最終処分の実現に向け、除染土壌の再生利用を政治主導で進めるよう第12次提言として政府に促す方向で最終調整に入った。県外での再生利用の実証が進まない中、処理水の海洋放出と同様に日本全体の問題として捉え、首相をトップとした政府全体で難題に対応することで実効性を高める狙いがあるとみられる。27日、提言案の内容が判明した。

 中間貯蔵施設に保管されている除染土壌は1月末時点で約1376万立方メートルで、県外最終処分の実現には減容化や再生利用で最終処分量を減らす必要がある。環境省は全国で再生利用を拡大させるため福島県外での実証事業を計画したが、予定地周辺の住民の反発を受けて頓挫している。

 こうした現状を念頭に、加速化本部の提言案で「個々の省庁で前に進めることは困難」と指摘し、「関係省庁が緊密に連携し、政府一丸となった体制の下、対応していく必要がある」として政治主導での実現が不可欠だと強調する。再生利用先の創出などは福島第1原発の処理水放出の際の経験を踏まえ、政府一体となった体制整備に向けた取り組みを進めるよう求める方向だ。

 県外最終処分実現には国民の理解・信頼の醸成が重要だとし、再生利用などの必要性と安全性については国際原子力機関(IAEA)による検証結果などを含め、国民に分かりやすい形で情報発信するよう促す。

 法律で明記した2045年までの除染土壌の県外最終処分期限まであと21年余りで、提言案には「残された時間は長くはない」との危機感を示す文言を盛り込む。内堀雅雄知事は昨年10月の講演で「たった22年」との表現を用い、同様の危機感を示していた。

■復興施策見直し言及

 提言案では、2025(令和7)年度までの第2期復興・創生期間後を視野に入れた期間内の復興施策全体の必要な見直しにも言及する。福島国際研究教育機構(F―REI、エフレイ)の設立や特定帰還居住区域の創設などに伴う新たな復興事業も着実に進める必要がある。このため、加速化本部は復興の現状を把握し、必要な見直しを行うよう指摘する方向だ。

 特定帰還居住区域の避難指示解除について地元自治体の意向を踏まえ、必要に応じて除染やインフラ整備などが進んだ地域から段階的に解除することなども提唱する。

【自民党第12次提言案のポイント】

◆除染土壌の県外最終処分に向け、再生利用などの取り組みを政治主導で実現

◆本格的な除染土壌の再生利用に向けた「再生利用基準」などの策定に向けた技術的検討

◆第2期復興・創生期間後も視野に入れた期間内の復興施策全体の必要な見直し

◆特定帰還居住区域の地元自治体の意向などを踏まえた段階的な避難指示解除

◆帰還困難区域の山林など土地それぞれの特性を踏まえつつ、物理的な防護措置を実施しない立ち入り制限の緩和などの検討

◆福島国際研究教育機構(F-REI、エフレイ)と国内外の産学官の多様な主体とのMOU(基本合意)の締結など連携を深める

◆食品などの基準値や出荷制限などの規制について、消費量の少ない食品に対する規制の考え方・背景などを含めた国際的な観点や科学的・合理的な観点からの速やかな検証の実施

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