スーパー空白地「JR金谷川駅」周辺に〝福大生の店〟誕生へ 経営者助言、農家も協力 野菜や魚販売

規格外野菜など生鮮食品を扱う店舗の開設に向け準備している星さん

 福島大の学生有志が大学最寄りの福島市のJR金谷川駅前に、生鮮食品を販売する店のオープンを目指す取り組みを始めた。約6割の学生が住む大学周辺にはスーパーがなく、買い物に不便を強いられてきた。会員サイト(SNS)を通じて農家やマーケティングの専門家から協力を取り付け、早ければ5月にも試験的に店舗を構える。規格外野菜や未利用魚などを取り扱い、食品ロス削減にも貢献したい考えだ。

■ヨーカドー福島閉店に危機感

 学生約4300人が在籍している福島大の付近には学生用アパートが並ぶが、食料品店がほとんどない。車を所有していない学生は鉄道を利用して福島駅や南福島駅周辺などを訪れ、食品を購入している。

 そんな学生たちを困惑させたのが、イトーヨーカドー福島店の5月での閉店だった。駅前の立地条件の良さから、多くの大学生が活用していたという。

 「買い物をする場所がなくなってしまう」。大学の寮で暮らしている行政政策学類2年の星萌生(めい)さん(20)=須賀川市出身、岩瀬農高卒=は危機感を募らせた。

 学内の購買店は弁当やおにぎり、菓子が中心。金谷川駅前にあるコンビニは野菜を売っているが、品ぞろえに限りがある。さらに、夏や春の長期休みに帰省などで学生が大幅に減少する地域の特性上、スーパーの新規出店は今後も期待できない。

 「ならば学生が店をつくろう」。昨年9月、SNSでスーパー開設の呼びかけをした。福島大の学生や卒業生、福島県の地域振興に関心がある社会人ら15人ほどが仲間に加わった。

 県内外の農家や経営者にも援助を打診している。水戸市の農家や北海道でマーケティングやブランディングを支援している一般社団法人の代表者から仕入れや流通、経営のノウハウの指導を受ける。

 商品は規格外の野菜、市場価値が低く廃棄される魚と肉などを想定している。「農家らの収入安定に少しでも役に立ちたい」との星さんの思いからだ。全国の名産品の取り扱いも視野に入れている。

 3~4月に地域のイベントに出店し、店舗運営の経験を積む。5~9月には大学近くにあるレンタルスペースなどでプレオープンする。学生から品ぞろえや営業時間、店舗の場所などのニーズを聞き取り、10月ごろからクラウドファンディングで開店資金を募る。

 オープン後の対策として長期休暇中は店を閉め、ECサイトを活用する案が出ている。店内には地域住民や学生らが集える設備も設ける予定で、レンタルスペースとしての収入も期待している。

 星さんは「年代、所属にとらわれず、魅力ある地域をつくりたい」と意気込んでいる。

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