「オルゴールには百年前の技術者たちの熱意と執念がこもっている」 京都のからくり人形作家が抱く夢は

自身が制作したからくり人形を紹介する橋爪さん(向日市森本町・永守コレクションギャラリー)

 オルゴールのメロディーとともに繊細な動きを見せる欧州のオートマタ(からくり人形)を中心に、国内外の貴重な約350点を所蔵する永守コレクションギャラリー(京都府向日市森本町)。京都府長岡京市の橋爪宏治さん(45)は昨年3月の開館時から館長を務める。「蓄音機や自動演奏装置を含めた幅広いコレクションは世界有数。展示解説を充実させ、世界一のオルゴールミュージアムを目指したい」と意気込む。

 自身もからくり人形作家。転勤族の家庭に生まれ、小学6年からは東京で育った。進学した東京造形大で、からくり人形に出合った。「実物の持つエネルギー、動きの面白さ、不思議さ」にひかれ、在学中から制作を始めた。昔話などをモチーフに「くすっと笑える作品」を創作する一方、芸術大学で教え、後進の育成に当たってきた。昨年12月には人形作家らと連携し、大阪市の商業施設「阪急三番街」のクリスマスディスプレーで大型オルゴールを組み合わせたからくりを作った。

 岡山県の現代玩具博物館・オルゴール夢館の館長を退職し、新たな舞台を探していたところ、公益財団法人・永守文化記念財団との縁がつながった。向日市出身で、モーター大手のニデック(京都市)を創業した永守重信代表理事の「スケールの大きさとバイタリティー」に感銘を受け「ここで力を発揮したいと思った」と振り返る。

 所蔵品は美術品として集められたり、興行で使われたりした欧州のアンティークが多い。「オルゴールは人類が最初に獲得した音楽再生装置。ものづくりに対する情熱や新しい時代を切り開くという百年前の技術者たちの熱意と執念がこもっている」と語る。その魅力を子どもたちに伝えたいと、夏休みの工作ワークショップなどの企画を手がけてきた。

 ギャラリーはまもなく開館1周年。トークショーや特別展示、体験型のワークショップなどの記念イベントを練る。今後は団体見学の受け入れだけでなく、ギャラリーによるオルゴールやからくり作品の制作、出前授業にも挑戦したいという。「地域に根差した活動で子どもからシニアまで誰もが楽しめる場所に」と夢を広げる。

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