賃金上昇率の加速&デフレ脱却で日本企業の時価総額「激増」の可能性…これから期待できる銘柄テーマとは【経済評論家が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

「日本の株式市場は『失われた30年』の克服を目指す、壮大な急騰相場を展開している」と語るのは経済評論家の杉村富生氏。本記事では『これから3年 株で攻める!』(すばる舎)から、著者の杉村氏が「ここから3年の株式投資は日本株(有望厳選株)の直球で間違いない」と言い切る理由と注目のテーマについて解説します。

欧米との金利差は当面継続、著名投資家の日本株評価も後押し

日本経済はコロナ禍を克服(新型コロナの感染症法上の位置づけを5類に変更)、これが家計消費に好影響を与え、インバウンド(訪日外国人)の復調も著しい。さらに、日銀は2023年7月末に金融緩和修正の判断を下したものの、金融引き締めが継続中の欧米と比べ、金利はまだ相当低い。植田総裁による日銀の金融緩和政策は、当分続くとの見方が有力である。

さらに、賃金上昇率が加速、デフレ脱却の糸口が見え始めた。少子高齢化などの克服は容易でないが、世界的に見れば日本経済の優位性は明らかだ。さらに、製造業の国内回帰、新工場の建設ラッシュがある。このようなマクロ的要因を背景に、出遅れが目立つ日本企業の時価総額は激増する可能性を秘めている。

これはウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハザウェイによる5大総合商社株の大量取得、ブラックロックのCEO(最高経営責任者)による日本株に対する強気発言の源泉となっている。

彼らは、2013年にスタートした日本再興戦略、企業統治改革の効果、新東西冷戦構造下での日本の優位性を評価している。すなわち、先進国のなかでの高い成長率、製造業の国内回帰、技術革新、半導体など新工場の建設ラッシュ(TSMC、PSMC、ラピダス)などを指摘できる。

さらに、インド、東アジアが世界経済をけん引する構図は、〝地の利〟を有する日本の追い風となろう。

実際、最大手の三菱商事(8058)は2023年6月、総合商社の先陣を切って時価総額を待望の10兆円台に乗せた。これは総合商社のビジネスモデルがバフェット氏に高く評価された結果である。

円安、リピーターの増加でインバウンド効果は拡大の一途

今後、インバウンドの経済効果が一段と期待できる。何しろ、街を歩く訪日外国人が急増している。昼時、築地場外市場(東京都中央区)に行くと、日本人より外国人の姿が目立ち、びっくりする。これは東京など大都市だけに限ったことではない。地方の観光地は、有名、穴場を問わず、外国人が闊歩している。先般、筆者は岐阜県の高山に講演に出かけたが、行きも帰りも電車のなかは外国人だらけで仰天した。もちろん、新幹線の車中は多言語が飛び交っている。

それはともかく、2023年10月の訪日外国人数は251.6万人と、ピークだった2019年の水準を上回った。『観光白書2023』によると、2019年における日本の観光産業のGDP(国内総生産)は11.2兆円だが、これは経済全体の2.0%にすぎない。ちなみに、スペイン7.3%、イタリア6.2%、フランス5.3%、日本を除く欧米7カ国平均では4.5%だ。日本の観光業には大きな伸びしろがある。

現状の日本は傾向的に通貨安のため、外国人の懐は温かい。もとより日本は食事もおいしく、おもてなし精神が行き届いているため、一度日本を訪れた外国人の多くは、リピーター指向を強めるという。したがって、日本のインバウンドは拡大の余地が極めて大きい。何しろ、日本の訪日外国人数は2019年の3188万人がピークだが、アメリカ、フランスには年間7000万~8000万人が訪れている。

革命的な新技術の誕生、ウクライナ戦争の終結にも期待

今後期待できる物色テーマとしては、地球温暖化抑制につながる再生可能エネルギー、異常気象に対応する国土強靭化、ドライバー不足対策にもなる自動運転、2024年7月に始まる新札発行に注目できる。

このほか、息の長いテーマとしては、全個体電池、量子コンピューター、生成AI、チャットGPT、情報セキュリティ、iPS細胞などがある。これらは、いずれも新しい技術の誕生をきっかけとした有望テーマだが、社会生活を変える革命的な技術の進歩は、関連セクターと企業の時価総額を急増させる可能性を秘めている。

テーマ性内包プラス好業績は、銘柄発掘の基本である。なお、2024年以降の3年間で忘れてならないテーマは、ウクライナ復興だろう。ロシアのプーチン大統領の暴挙によって開始されたこの戦争は、多くの犠牲者を出した(ロシア軍の死傷者は30万人を超えているとの報道もある)だけでなく、重要なインフラ施設、街、住宅などを破壊した。被害を受けたのはウクライナだけではなく、世界中が物価高(インフレ圧力)、小麦(食糧)をはじめとするモノ不足に苦しんでいる。原油価格も一時的にせよ、急騰したではないか。

だが、どのような戦争もいずれ終わる。原稿執筆時、ロシア・ウクライナ戦争は依然として膠着状態にあるが、2024年中に停戦交渉開始→休戦が期待できると考えている。西側諸国は、アメリカを中心に「支援疲れ」に陥っている。

両国とも首脳陣は強気だが、国民は疲弊し、財政的にも戦争の長期継続は難しいだろう。軍事的には、ロシアは半導体などの不足により兵器の供給不足が指摘されているし、ウクライナは兵員が不足し、若者(18歳以上)の動員までうわさされている。

近い将来、戦争が終結すれば、当然、ウクライナの復興は世界的なテーマとなる。日本企業もこれまでの経験を生かし、多くの企業が直接的、間接的に参入するだろう。復興初期段階の本命は、コマツ(6301)、日立建機(6305)といわれているが、総合商社など世界的なネットワークを有する企業の活躍は必至であり、大きなビジネスチャンスとなる。

なお、すでにJPモルガンなどは「ウクライナ復興ファンド」を組成しているし、NY上場のポーランドETFがジリ高になっている。ヘッジファンド、国際マネーはやることが早い。2024年にはこれらの動きが現実のものになろう。

杉村 富生

経済評論家、個人投資家応援団長

※本記事は『これから3年 株で攻める!』(すばる舎)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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