松くい虫被害、過去最悪 23年の庄内海岸林、猛暑と少雨が影響か

松くい虫被害が過去最大だった庄内海岸林。昨夏の猛暑の影響とみられる=酒田市

 庄内海岸林で2023年に確認された松くい虫被害が本数、体積とも過去最悪だった16年の2倍近くに上ることが27日、県や沿岸各市町などによる会合で示された。昨夏の猛暑と少雨の影響を受け、感染源となる切り残しの被害木から被害が激増したとみられる。切り残しの被害木がある限り被害はなくならないとされるが、予算や対応する人員には限りがあり、従来の海岸林を維持する難しさが顕在化している。

 「庄内海岸林松くい虫被害対策強化プロジェクト会議」が同日、遊佐町役場議場で開かれ、県と庄内森林管理署の集計が示された。被害本数は国有林と民有林で計12万9035本、体積換算で5万5644立方メートルで本数、体積とも前年の2倍超だった。内訳は国有林が6万7008本、1万7824立方メートル。民有林は6万2027本、3万7820立方メートル。

 松くい虫による被害は、樹皮を食べる「マツノマダラカミキリ」に寄生する「マツノザイセンチュウ」(線虫)が木の中に入り、増殖して発生する。線虫はカミキリムシが木をかんだ傷から侵入し、水や養分の吸い上げを妨げて松を枯らす。庄内総合支庁は昨夏の高温と少雨で樹勢が弱まり、カミキリと線虫の活動が活発化した可能性があるとみている。

 会合の協議では対策として、伐倒駆除を進めるほか、適期の薬剤散布、抵抗性の松を植林する方針などが示された。

 一方、会合の席上、オンラインで講義した森林研究・整備機構森林総合研究所東北支所の中村克典産学官民連携推進調整監は、戦略的防除の観点から松以外の選択肢の必要性について言及した。被害の激増は感染源が残っていたことが大本の原因とし、全量駆除は困難と強調。優先順位に従った駆除の重要性を指摘した上で「全てが松でなければならないのか、峻別(しゅんべつ)が問われている」と訴えた。

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