誰もが憧れるモータースポーツの最高峰。24戦の過去最大レース数と究極のコンペティション【2024年F1をイチから学ぶ】

 モータースポーツの最高峰であるF1世界選手権は2月29日〜3月2日に開催される第1戦バーレーンGPで、2024年シーズンの開幕を迎える。軽量シャシーに、高出力のパワーユニット(PU)を搭載する最新のF1マシンは、サーキットを最も速く周回することが可能なマシンであり、どのドライバーも憧れる“究極の自動車”とも言える。

 登竜門レースで活躍を見せたトップドライバーが参戦するため、F1ドライバーのドライビングテクニックも魅力だ。また、他のレースカテゴリーよりもシャシー(車体)、PU/エンジンなど、マシン開発の面でチーム/コンストラクター、PUメーカーにとっては独自開発が可能な領域が多く、それゆえに、類を見ない技術開発競争が繰り広げられていることもF1の特徴だ。

 世界21カ国を舞台に毎戦オリンピック級の視聴率とファン数を誇り、近年は北米、中東で空前のブームを巻き起こしているF1。2024年シーズン開幕を前に、あらためて2023年シーズンからのレギュレーションの変更点や、開催スケジュールを整理してみよう。

2023年F1第18戦カタールGP レース後、マシンを降りて座り込んだオスカー・ピアストリ(マクラーレン)とマックス・フェルスタッペン(レッドブル)

 まずは、技術規則の主な変更点について。昨年10月のカタールGPが高温多湿の過酷なコンディション下で開催されたことで、決勝レース後に複数のドライバーが深刻な体調不良を訴えたほか、ローガン・サージェント(ウイリアムズ)は決勝レース中に急性熱中症となり、チームの指示でリタイアする結果に。そのため2024年シーズンより、高温時にドライバーの冷却を助けるために、車両に冷却用の開口部(スクープ)を設けることが可能となった。

 続いて、競技規則の主な変更点について。2023年は試験的に2大会でタイヤ供給本数を11セットに減らし、各予選セッションごとに指定された1種類のスリックコンパウンドを使用する“Alternative Tyre Allocation”(ATA/代替的なタイヤ配分)が導入されていた。タイヤの生産数と輸送量を減らすサスティナブルな試みだったが、2024年はATAの導入は行われず、全戦で各車に13セットのタイヤが供給される。

 そしてピレリから供給されるコンパウンドにも変更があった。2023年は『C0』を加えた6種類が設定されていたが、2024年はもっとも硬い『C1』からもっとも柔らかい『C5』までの5種類へと戻ったかたちだ。

 すでに開幕3大会のタイヤセレクションがピレリより発表されており、開幕戦バーレーンGPでは、C1、C2、C3、第2戦サウジアラビアGPはC2、C3、C4という2023年と同じコンパウンドが選ばれた。なお、第3戦オーストラリアGPのコンパウンドはC3、C4、C5で、2023年よりもソフト寄りの選択が行われている。

2024年F1第1戦バーレーンGPのタイヤセレクション
2024年F1第2戦サウジアラビアGPのタイヤセレクション
2024年F1第3戦オーストラリアGPのタイヤセレクション

■参考:フェラーリの2024年車両『SF-24』主要諸元

モデル名 SF-24

シャシー カーボンファイバー、ハニカムコポジット

キヤボックス フェラーリ製8速縦置き(前進8速+後退1速)

ブレーキ ブレンボ製ベンチレーテッドカーボンディスク(フロント/リア)電子制御式リアブレーキ

フロントサスペンション プッシュロッド式

リアサスペンション プルロッド式

総重量 798kg(クーラント、オイル、搭乗者含む)

フロント/リヤホイール 18インチ

パワーユニット ー

名称 066/12

構成 90度V6/4バルブシングルターボ

排気量 1600cc

最高回転数 15000回転

過給器 シングルターボ

最大燃料容量 100kg

ボア 80mm

ストローク 53mm

最大噴射 500bar

ERS(エネルギー回生システム) ー

構成 電気モーターによるハイブリッドエネルギー回収システム

バッテリー リチウムイオン電池(最小重量20kg)

バッテリーエネルギー 4MJ

MGU-K最大出力 120kW(163cv)

MGU-K最高回転数 50,000rpm

MGU-H最高回転数 125,000rpm

2024年F1バーレーンテスト2日目 シャルル・ルクレール(フェラーリ)
2021年のレッドブルRB16Bに搭載されたパワーユニット『ホンダRA621H』

■ルーキー不在、2チームが名称変更

 2024年シーズンのドライバーラインアップは、2023年後半のレギュラードライバー陣から変化はなく、ルーキードライバー不在のシーズンとなる。

 そんななか、2チームがチーム名を変更している。スクーデリア・アルファタウリは、レッドブル社傘下のファッションブランド、アルファタウリの商業活動終了に伴い、チーム運営会社の法人名を『レーシング・ブルズ(Racing Bulls)』に変更。電子決済大手の『ビザ』をメインスポンサーに迎え、『ビザ・キャッシュアップRB(Visa Cash App RB)』という名称でエントリーすることになった。

RBF1の2024年型マシン『VCARB 01』の発表会。左からアムナ・アル・クバイシ、F1のステファノ・ドメニカリCEO、角田裕毅、ダニエル・リカルド、ローレン・メキース代表、ピーター・バイエルCEO、HRCの渡辺康治社長

 アルファロメオとのタイトルスポンサー契約終了したザウバーは、オンラインカジノとスポーツベットを展開する『ステーク』をタイトルスポンサーに向かい入れ、『ステークF1チーム・キック・ザウバー』としてエントリーする。

 なお、同チームは2024年1月1日に正式なチーム名として『ステークF1チーム』を発表したが、国や地域によってはオンラインカジノやギャンブルに対する広告規制が敷かれている影響か、チームのオフィシャルサイトでは『ステークF1チーム・キック・ザウバー』という表記となっている。

『キック』はステーク傘下の動画ストリーミングプラットフォームであり、2024年と2025年は同社がザウバーのマシン名のネーミングライツ(命名権)を獲得したため、コンストラクターとしては『キック・ザウバー』と呼称される。なお、同チームの運営は引き続き、スイスのザウバー・グループが担っており、同チームは2026年よりアウディのワークスチームとなることも決定している。

2024年F1バーレーンテスト1日目 バルテリ・ボッタス(キック・ザウバー)

 先述のとおり、昨年からドライバーラインアップに変更はないが、2024年シーズンをもってルイス・ハミルトンが12年過ごしたメルセデスからの離脱しフェラーリへ加入することを発表し、同時にカルロス・サインツの今季限りでのフェラーリ離脱が明らかとなった。移籍前のラストイヤーで両名が現在のチームでどのような戦いを見せるかは注視しておきたい。特に、移籍先の決まっていないサインツにとっては、自らの価値をあらためて証明する必要があるだろう。

 また、F1参戦4年目を迎える角田裕毅(RB)の戦いぶりにも注目だ。チーム体制も一新したRBは兄弟チームであるレッドブルとの提携強化を進めており、RBのパフォーマンス向上に期待したいところ。角田はデビューイヤーとなった2021年に記録した自己最高位の4位を越える成績、表彰台登壇を果たせるかという点にも引き続き注目だ。

 そして、2024年シーズンのタイトル争いの焦点は、4連覇に挑むフェルスタッペンとレッドブルに対し、フェラーリ、メルセデス、マクラーレン、アストンマーティンといった有力チームがいかに挑むかとなるだろう。フェルスタッペン&レッドブルの帝国は続くのか、それとも下克上は起きるのか。各マシンのポテンシャルを見極めるためにも、第1戦バーレーンGPではフリー走行1回目から注視しておきたい。

■2024年F1世界選手権 ドライバーラインアップ

No. Driver Team

1 マックス・フェルスタッペン オラクル・レッドブル・レーシング

11 セルジオ・ペレス オラクル・レッドブル・レーシング

63 ジョージ・ラッセル メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム

44 ルイス・ハミルトン メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム

16 シャルル・ルクレール スクーデリア・フェラーリ

55 カルロス・サインツ スクーデリア・フェラーリ

81 オスカー・ピアストリ マクラーレン・フォーミュラ1チーム

4 ランド・ノリス マクラーレン・フォーミュラ1チーム

18 ランス・ストロール アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム

14 フェルナンド・アロンソ アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム

31 エステバン・オコン BWTアルピーヌF1チーム

10 ピエール・ガスリー BWTアルピーヌF1チーム

23 アレクサンダー・アルボン ウイリアムズ・レーシング

2 ローガン・サージェント ウイリアムズ・レーシング

3 ダニエル・リカルド ビザ・キャッシュアップRB F1チーム

22 角田裕毅 ビザ・キャッシュアップRB F1チーム

77 バルテリ・ボッタス ステークF1チーム・キック・ザウバー

24 周冠宇 ステークF1チーム・キック・ザウバー

20 ケビン・マグヌッセン マネーグラム・ハースF1チーム

27 ニコ・ヒュルケンベルグ マネーグラム・ハースF1チーム

マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
角田裕毅(RB)

■日本GPは4月。24戦中3戦が土曜決勝

 2月29日〜3月2日に開催される第1戦バーレーンGPを皮切りに、史上最多となる全24戦が開催される2024年のF1。そのうち6戦がF1スプリントとなり、オーストリアGP、アメリカGP(オースティン)、サンパウロGP(ブラジル)、カタールGPは昨年から継続。新たに中国GPとマイアミGPもF1スプリントでの開催になる。

 2024年シーズンはF1スプリントに新フォーマットが導入される。2023年は金曜日にフリープラクティス1(FP1)と決勝用予選、土曜日にスプリント・シュートアウト(スプリント用予選)とスプリント。そして日曜日に通常の決勝が行われる流れだった。2024年は、スプリント・シュートアウトは金曜のFP1の後で行われ、土曜には、まず100kmのスプリントが開催された後に、決勝グリッドを決める予選が行われる。日曜決勝については変更はない。

 そして、今季は第22戦ラスベガスGPに加え、第1戦バーレーンGPと第2戦サウジアラビアGPが土曜日決勝となる。これは3月9日の第2戦終了後、イスラム教徒の断食月“ラマダン”が始まる3月10日(日)夕方以前にサウジアラビアを出国できるようにという処置のためだ。

 また日本のファンにとっては、例年秋に開催されてきた鈴鹿サーキットでの日本GPが初めて春真っ盛りの4月5~7日に開催されることは最大のトピックだろう。好天に恵まれれば、桜咲くなかで走り抜けるF1マシンを目にすることができるかもしれない。これまでとは違った、新しい鈴鹿でのF1を心待ちにしたいところだ。

■2024年F1世界選手権カレンダー

ラウンド 日程 グランプリ(開催地)

1 2月29日~3月2日 バーレーン(サクヒール)*土曜日決勝

2 3月7日~3月9日 サウジアラビア(ジェッダ)*土曜日決勝

3 3月22日~24日 オーストラリア(メルボルン)

4 4月5日~7日 日本(鈴鹿)

5 4月19日~21日 中国(上海)

6 5月3日~5月5日 マイアミ(マイアミ)

7 5月17日~19日 エミリア・ロマーニャ(イモラ)

8 5月24日~26日 モナコ(モナコ)

9 6月7日~9日 カナダ(モントリオール)

10 6月21日~23日 スペイン(バルセロナ)

11 6月28日~30日 オーストリア(シュピールベルク)

12 7月5日~7月7日 イギリス(シルバーストン)

13 7月19日~21日 ハンガリー(ブタペスト)

14 7月26日~28日 ベルギー(スパ・フランコルシャン)

15 8月23日~25日 オランダ(ザントフォールト)

16 8月30日~9月1日 イタリア(モンツァ)

17 9月13日~15日 アゼルバイジャン(バクー)

18 9月20日~22日 シンガポール(シンガポール)

19 10月18日~20日 アメリカ(オースティン)

20 10月25日~27日 メキシコ(メキシコシティ)

21 11月1日~3日 ブラジル(サンパウロ)

22 11月21日~23日 ラスベガス(ラスベガス)*土曜日決勝

23 11月29日~12月1日 カタール(ロサイル)

24 12月6日~8日 アブダビ(ヤス・マリーナ)

2024年F1カレンダー

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