【インドネシア】世界初、香りをデジタル配信[経済] 新興ホライズンが日イ同時展開へ

香りのデータ配信サービス「Scent Store(セントストア)」をインドネシアで展開すると発表したホライズンの関係者や著名インフルエンサー、ジュンブル県のヘンディ知事(左から5人目)ら=26日、ジャカルタ特別州(NNA撮影)

香りをデジタルデータに転換してオンラインで提供するスタートアップ企業のHorizon(ホライズン、東京都港区)は、インドネシアで香りのデータを配信するプラットフォーム「Scent Store(セントストア)」を展開する。デジタルデータを基に香りを作る専用のディフューザーを、8月にも日本と同時に発売する。香りをデジタル技術でデータ配信するのは世界で初めてという。部屋の芳香剤や個人で使う香水など香りが大好きなインドネシア人に向けて、革新的な最先端技術で市場を開拓する。

ホライズンは2022年2月に設立され 、23年7月にはセントストアの前身の「Smell Market」で香りのデータ配信サービスを開始した。セントストアのアプリは現在、日本国内でしかダウンロードできないが、インドネシアでも配信サービスが始まれば利用できるようになる。

セントストアでダウンロードしたデジタル化された香りは、近距離無線通信「ブルートゥース」で接続した専用のディフューザーで楽しむことができる。8月にも発売予定のディフューザーは、インクジェットプリンターの交換式カートリッジのように、内蔵されたアロマエッセンスのカートリッジを調合して香りを作り、拡散する仕組み。理論上は100万種類以上の香りを再現できるという。

ディフューザーのカートリッジは最大で40種類のアロマエッセンスを搭載でき、価格はカートリッジ10個入りタイプの場合で約2万円になる見通し。香りの価格は、それぞれのレシピを開発したクリエイターが、セントストアで販売する際に設定する。

ディフューザーは当初1種類を発売する。ホライズンのアレックス・ツァイ代表取締役は、「ブルートゥースで接続するスピーカーのように、今後は多くのメーカーがいろいろな機種を投入することを期待している」と話した。

■香りが大好きな国で

ホライズンのアレックス代表取締役。手にしているのは、アロマのカートリッジ6個が入る専用ディフューザー=26日、ジャカルタ特別州(NNA撮影)

アレックス氏は、日本と同時配信する国としてインドネシアを選んだ理由について、世界第4位の人口規模に加えて「香水を体中や服にも吹き付ける使い方からも分かるように、インドネシアの人たちは香りが大好きで、消臭文化の方が根強い日本とは全く違う習慣がある」と指摘した。

ホライズンはインドネシアでの展開に先立ち、子会社セントストア・インドネシアを設立。8月のサービス開始に向けて、同国の著名インフルエンサー40人以上に香りを開発してもらい、それぞれをブランド化して情報を発信するなどで周知活動を進めていく。

また、東ジャワ州ジュンブル県で同月2~4日に開催されるイベント「ジュンブル・ファッション・カーニバル」に参加し、出演者のコスチュームをイメージしたフレグランスをホライズンが作成して、セントストアでコラボレーション商品として配信することを計画している。同イベントは毎年開催されており、今年は22回目。主催者側は150万人の来場を見込んでいる。

■企業、教育現場向けの提供も視野に

デジタル化した香りは、個人向けだけでなく、企業への提供も視野に入れている。ホテルやスパにディフューザーを設置してもらうほか、香水の開発企業にはアロマのサンプルを物理的に輸送しなくても、デジタル化した香りをインターネットで送信できるため、物流コストの削減と輸送時間の短縮が図れると提案している。

教育分野での提供も想定している。アレックス氏は2月下旬に首都ジャカルタで開かれた教育イベントで登壇し、香りをデジタル配信することで、インドネシアの教育分野における学習体験の質を高める可能性についてプレゼンテーションを行った。

デジタル配信される香りを遠隔でも体感できれば、文章や画像で視覚的に見る以上の体験ができるようになる可能性を秘めている。例えば、強い臭気で知られる世界最大の花「ラフレシア・アルノルディイ」の香りをデジタルで受信すれば、数日間だけの開花タイミングの場にいなくても、花の香りを学校などの教育現場や博物館などで体験できるようになるという。

8月開催の「ジュンブル・ファッション・カーニバル」に出演するコスチューム。ホライズンは10体のコスチュームをイメージしたフレグランスを作成し、セントストアでコラボレーション商品として配信する=26日、ジャカルタ特別州(NNA撮影)

© 株式会社NNA