復興の象徴、雪割草咲いた 寒さと地震乗り越え 門前のハウス、山﨑さん丹精

無事に花が咲き、笑顔を見せる山﨑さん=輪島市門前町広瀬

 2007年に発生した能登半島地震の翌年から、輪島市で復興の象徴となってきた雪割草が今年も花を咲かせた。栽培している同市門前町のハウスを訪れると、冬の寒さに耐え、複数本が小さなつぼみをほころばせていた。花言葉は「忍耐」。被災者は懸命に開いた花びらに復興への希望を重ねる。(森田蕗子)

  ●半分被害 十分な世話ができない中

 雪割草といえば、門前町の猿山岬は国内有数の群生地として有名だ。輪島総局にいた2年前に足を運び、白やピンク、薄紫のかれんな花に癒やされたことを思い出す。

 門前町広瀬にあるハウスを訪ねた。門前雪割草生産組合の山﨑輝雄代表理事(80)が1万株以上を育てていたが、地震で育苗ポットに入っていた土が飛び散ったり、土台が傾いて苗が落下したりし、半分ほどが被害に遭ったという。

 山﨑さんが被害を知ったのは地震から1週間後だった。「これはひどい」。丹精してきた雪割草の無残な姿にショックを受けながら、落ちた土を戻すなど応急処置を施した。

 その後、故障した水溜タンクのポンプを修理し、今月17日に生育環境を復活させたが、十分な世話はできなかった。2棟あるハウスに丁寧に水やりをすると2時間はかかるといい、山﨑さんは「そんな余裕も時間もなかった」と振り返る。

 ハウスで育てられた雪割草は毎年、町内の商店で販売される。地震後、「今年も店に並べたい」との依頼が寄せられたが、状況が状況なだけに山﨑さんは迷っていた。

 だが、そんな中でも雪割草は花を咲かせた。「この子たちも負けじと頑張っている。皆さんの笑顔のためにも、しっかり育てたい」。山﨑さんは腹をくくった。

 取材を終えてハウスを出ると、被害に遭ったたくさんの苗が置かれていた。すると、「持ってって育ててみんか」と山﨑さん。雪割草の世話が簡単でないのは知っているが、被災した人たちの苦労を思うと「私も頑張らなきゃ」という気持ちが湧いてきた。復興の取り組みが花咲く日を願い、大事に育てたい。

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