輪島塗支援へ箸100万円注文 小松・本光寺

輪島塗の箸を手にする多田前住職(右)と明弘住職=小松市本折町

  ●塩安感謝「職人呼び戻したい」

 能登半島地震で被害を受けた輪島塗業界を支援したいと、小松市本折町の真宗大谷派本光寺は28日までに、塗り箸100万円分を注文した。受注した塩安漆器工房(輪島市)は工房のガラスが割れたり、道具などが散乱したりしたほか、家が倒壊した職人が2次避難している。同工房は「職人を呼び戻すきっかけになる」と感謝している。

  ●多田前住職、本紙記事に「心動かされた」 

 きっかけは塩安漆器工房の再開を報じた11日付北國新聞朝刊で、記事を読んだ多田眞前住職(73)が「心を動かされた」とし、寺としてできる支援を考えた。

 「品物を買って応援するのが一番だ」と、日常生活で使いやすい箸を注文し、寺の納骨堂に遺骨を納める門徒のお布施に対する返礼にしようと思い立った。多田明弘住職(42)や門徒の責任役員に相談し、賛同を得た。

 多田さんはその日のうちに工房へ連絡した。電話でやりとりを重ね、サンプル5種類を受け取り、トンボの絵柄があしらわれた箸や、赤と黒色からなる2種類を選んだ。

 「箸はでき次第、順番に渡してもらえればいいので、先に送金します」と支払いは既に済ませた。箸には「一日も早い復旧復興を願い、なりわい支援になればという思いを受け取ってください」などとメッセージを添える予定だ。多田さんは「箸を受け取ることで支援になる」、明弘さんは「記事のご縁で一店舗でも、お一人でも支援につながればと思う」と話す。

 塩安漆器工房では店舗は無事だったが、木地に塗った漆を乾かす漆風呂内で商品が落下し、棚板も散乱した。漆塗り職人は家屋の倒壊や集落の孤立で8人のうち5人が金沢市や加賀市などに避難した。中には3時間かけて崩れた土砂の上を歩いて孤立集落を脱した人もいる。

 同工房の塩安眞一代表は、2次避難した職人が違う仕事に就く可能性もある中、輪島に戻るよう呼び掛けても「仕事もないのに…」と相手にしてもらえないとし、「仕事があって水と住む場所がそろえば職人を戻せる」と話した。

地震で道具類が散乱した上塗りの工房=輪島市小伊勢町の塩安漆器工房

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