【セルジオ越後】“守り勝ち”をした、なでしこジャパン。気合の入った守備が光ったけど...遠藤と宮澤の穴や国立の空席は埋められなかったね

なでしこジャパンが、パリ五輪・アジア最終予選の第2戦で北朝鮮に2-1で勝利。2大会連続のオリンピック出場を決めた。

日本は攻撃の時間は短かったけど、少ないチャンスを確実にモノにして2得点。決定機は北朝鮮の方が多かったんじゃないかな。それでも日本は辛抱強く守り、相手の反撃を1点に抑えて逃げ切った。“守り勝ち”だったね。

第1戦で採用した4バックから3バックに変更し、守備時には最終ラインが5枚並んだなでしこジャパンは、守備の意識が高かった。相手を挟み撃ちするなど、組織的で気合の入ったディフェンスが光っていたね。

前半終了間際のゴールキーパー山下のスーパーセーブや、熊谷らセンターバック陣が際どいプレーで身体を張って守っていたのも印象的だった。

北朝鮮は66分にアタッカー2人を投入してきた。ともに前線でボールを収めるよりも、ディフェンダーの背後を狙うタイプだったけど、フィジカルがそれほど強くなかったから、日本のセンターバック陣は対応しやすかったはずだ。

パリ行きの切符を掴み取った試合で、なでしこジャパンの課題も見えた。ヒロインを挙げれば山下で、守備的な選手が光ったのは劣勢だった証拠だ。攻撃面では、怪我のため不在だった遠藤と宮澤の穴を、埋められなかったと思う。去年のワールドカップで見られた鋭いカウンターもほとんどなかった。

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人気面も気になった。オリンピック出場が懸かった大一番なのに、国立に入ったお客さんは2万人程度。半分以上が空席だったのは寂しいよね。

本大会でなでしこジャパンに求められるのは、メダルの獲得だ。世間の注目が大いに集まるオリンピックで結果を残せば、女子サッカーの認知度も上がる。集客面で苦戦が続いているWEリーグにも、良い影響があるはずだ。

どうしても、2011年の女子ワールドカップでの優勝や12年のロンドン五輪での銀メダルが懐かしくなってしまう。当時のチームには澤さんというスター選手がいたし、知名度があった。

今のチームからも国民的な人気選手が出て、女子サッカーをどんどん盛り上げてほしい。そのために、世界の強豪国との差をしっかりと分析して、大舞台に挑んでほしいね。

【著者プロフィール】
セルジオ越後(せるじお・えちご)/1945年7月28日生まれ、78歳。ブラジル・サンパウロ出身。日系ブラジル人。ブラジルではコリンチャンスやパウリスタなどでプレー。1972年に来日し、日本では藤和不動産サッカー部(現・湘南ベルマーレ)で活躍した。引退後は「さわやかサッカー教室」で全国を回り、サッカーの普及に努める。現在は解説者として、歯に衣着せぬ物言いで日本サッカーを鋭く斬る。

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