動物園学術誌、3者で創刊 茨城大、かみね動物園、千葉市動物公園 飼育員の知見、共有し伝承

茨城大や千葉市動物公園と合同で学術誌を刊行することになった日立市かみね動物園=2022年9月18日、日立市宮田町

茨城大(茨城県水戸市)と同県日立市かみね動物園、千葉市動物公園は28日、3者共同で学術誌を創刊すると発表した。3機関による動物園の学術誌は国内初。各動物園の飼育員や獣医師、同大研究員の論文を中心に掲載予定。研究者だけでなく、動物園好きの市民などに気軽に読んでもらえる学術誌を目指す。

同大などによると、学術誌は「ZOO SCIENCE JOURNAL(ズー サイエンスジャーナル)」。年1回発行し、創刊号は3月に公開予定。3者共同プロジェクトのウェブサイトに掲載し、誰でも閲覧できる。

掲載内容は、動物園職員が日常的に実践する飼育の技術的工夫などの情報が中心。ウェブサイトで公開することで、他の動物園の飼育員や研究者などと知見を共有し、動物の生態解明や飼育技術の確立などにつなげる狙いがある。現場の飼育員が培ってきた技術や知識は、これまで口承や師弟間で受け継がれてきたが、全国的には途絶えてしまったものも少なくないという。

同大農学部の小針大助準教授は「知的資源を形にして残さなければいけない」と刊行の意義を指摘。同ジャーナルを「大学と動物園の活動モデルとして、他地域でも同じような仕組みが広まれば」としている。

創刊号では、獣舎改装工事がキリンの行動に及ぼす影響に関する論文や、人工保育チンパンジーが群れへ早期復帰する事例報告など記事11本を掲載する。このほか、飼育員・獣医師が1年間の仕事で気付いたことを自由に紹介する活動報告コーナーも設け、動物園の活動について広く知ってもらえる内容にした。

日立市かみね動物園では、キリンやゾウ、トラなど約100種540点を展示。同大と同園は2015年から本格的な共同研究に着手し、学生や研究員、飼育員が動物園が抱える課題解決に向けて取り組んできた。20年からは千葉市動物公園も加わり、共同プロジェクト「ZOO SCIENCE HUB(ズー サイエンス ハブ)」を設立。学術誌にはプロジェクトの研究成果なども掲載するという。

同ジャーナルの刊行について、かみね動物園の生江信孝園長は「飼育員の日々の仕事を知るきっかけになり、動物園を好きな人の裾野が広がればうれしい」と期待を寄せた。

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