「お金が絡むとギスギスしないか…」 馬毛島自衛隊基地整備 地元漁師への補償配分決まってもくすぶる不満

漁業補償配分案の採決に臨む種子島漁協の組合員=28日、西之表市東町

 鹿児島県西之表市馬毛島の自衛隊基地整備に伴う漁業補償の配分が28日決まった。個人補償の19億円余を巡っては、馬毛島を主要漁場としてきた地区とそれ以外で“綱引き”があったとされる。当初案から漁協の受け取り分を減らし、水揚げ補償を充実させるなどして折り合いを付けた形となった。

 関係者によると、配分検討委員会では「補償の意義」が焦点となった。島に漁業拠点があった歴史的背景を重視するか、漁協が有する漁業権全体への補償と捉えるか。漁協幹部が「100%の解決策はない」と言うだけに、組合員には少なからず不満が残る。

 「ナガラメ(トコブシ)の島という訴えが届かず残念。現役世代が多いキビナゴ、モジャコ漁に押されてしまった」と住吉・西之表地区の70代男性。現在は工事関係者の送迎に従事する男性(77)は「半世紀以上続けた仕事を失うのに一方的に決められた。本音は(基地整備に)反対だが、声を上げても疎まれる。こんなやり方でいいのか」と語気を強めた。

 基地整備では馬毛島南部にも揚陸施設が予定され、米軍空母艦載機陸上離着陸訓練(FCLP)が始まれば新たな制限が設けられる可能性もある。漁業を巡る動きは終わりが見えず、種子島東岸で漁をする男性(69)は「お金が絡むと不満がくすぶる。漁師同士でギスギスしないといいが…」と不安を口にした。

〈馬毛島の変化を写真で比べる〉北側上空から見た馬毛島。左は2023年1月12日撮影、右は24年1月8日撮影=いずれも本社チャーター機から

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