23年度芸術選奨 大臣賞にテキスタイルデザイナー・須藤さん 茨城・石岡出身

水戸芸術館での個展開幕を前に、デザイン着想のきっかけを話す須藤玲子さん=16日、水戸市五軒町

■広がる布作りの可能性

文化庁は28日、2023年度芸術選奨の文部科学大臣賞を23人と1組に贈ると発表した。茨城県関係では石岡市出身のテキスタイルデザイナー、須藤玲子さん(70)が選出された。新人賞は23人を選んだ。賞金は大臣賞が120万円、新人賞が80万円。贈呈式は3月12日に東京都内で行う。

受賞について、須藤さんは「驚きがあったが、光栄に感じる。展覧会の機会を得られたのがまずうれしいのに、加えて賞まで頂けるとは」と喜びを示した。

須藤さんのは、伝統的な染織技術と現代の先端技術を融合させたり、廃材を活用したりする革新的な布作りが特徴だ。布のデザインの着想を得る背景から制作過程、活用までをたどり、テキスタイル(布地・織物)の可能性を紹介する個展「須藤玲子 NUNOの布づくり」が受賞につながった。

同展では、須藤さんが率いるテキスタイルデザイン・スタジオ「NUNO」のメンバーや全国の工場と協働作業で布を作り上げていく様子を、音響や映像を使って紹介している。制作の要となる情報を公開することに不安もあったが、各地の職人らの後押しもあり「自由に情報を得られる時代だからこそ、公開する意義がある」と決断した。

同展は2019年に香港のアートセンター「CHAT」で企画・開催され、ヨーロッパ各地や香川県丸亀市を巡回。現在は5月6日まで茨城県水戸市五軒町の水戸芸術館現代美術ギャラリーで開かれている。「香港民主化デモやコロナ禍の中で、多くの人の力で築き上げた展覧会」と苦労を振り返り、「気持ちがこもり、人の心を打ったのだろう」と分析する。

須藤さんは1953年、石岡市生まれ。株式会社「布」代表。東京造形大名誉教授。40年にわたって布作りに取り組み、作品はニューヨーク近代美術館をはじめ世界の著名な美術館に所蔵されるなど、国内外で高く評価されてきた。

「1枚のテキスタイルを作るために多くの知恵や技術が集まり、織り上がるようにできていく。布作りの可能性が広がる様子を体感してほしい」と来場を呼びかける。

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