食の未来へ「納豆菌粉」量産態勢整備 鶴岡・慶大先端研発ベンチャー

納豆菌粉入りのパン(フェルメクテス提供)

 タンパク質を効果的に取れる食材として、納豆菌を粉末化した「納豆菌粉(きんぷん)」の製造に取り組む慶応大先端生命科学研究所(先端研)発ベンチャー「フェルメクテス」(鶴岡市)が量産化の態勢を整えた。今秋ごろに納豆菌粉入りのパンや麺をテスト販売する。試食した人たちからは「もちもち感」が魅力などの声が聞かれている。生産効率に優れ、地球規模の人口増加に対応する食料確保策にもつながり得るという。

 同社によると、納豆菌粉は発酵タンクで培養した納豆菌をフリーズドライするなどして製造する。100グラム当たりのタンパク質量は約70%で、同じ量の小麦粉(薄力粉)に比べ、およそ7倍。パンや麺、お菓子に使う小麦粉や米粉などの一部と置き換え、タンパク質を効率的に摂取できる食品の開発を目指している。大手食品メーカーとの共同商品開発も進めている。

 昨年11月にイベントで納豆菌粉入りのパンを提供したところ、一部から「納豆のにおいがする」との声もあったが、「もちもち感がする」「うまみが強い」などと好評だった。今後は「Kin―pun」のブランド名でPRする。

 これまでは自社の容量10リットルの発酵タンクで製造してきた。今年に入り、外部企業に製造を委託することで、夏ごろには最大10万リットルのタンクを使えるめどがついた。納豆菌は約1時間で2倍の量になり、計算上は大きなタンクと培養液が十分にあれば、1グラムの納豆菌が24時間後には16トンにもなるという。

 現時点では、1キロ数万円と価格の高さがネック。今後、さらに培養効率を高めるほか、専用工場を自前で準備するなどし、将来的には小麦粉と同程度の価格まで下げたい考え。大橋由明最高経営責任者(CEO)は「日本市場で認められた上で、輸出も検討していきたい」と話している。

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