JR東、津軽線・蟹田-三厩間廃線後に法人設立案 自治体とバス共同運営

津軽線沿線自治体の首長らと意見を交わすJR東日本盛岡支社の久保支社長(中央)=28日、青森市

 2022年8月の大雨被害の影響で運休が続くJR津軽線・蟹田-三厩間(青森県外ケ浜町と今別町、28.8キロ)の存廃協議を巡り、JR東日本は28日、両町に提案してきた鉄路廃止後のバス、タクシー転換について、NPO法人などを設立して自治体と共同で運営を担う案を提示した。18年以上の長期運営を想定し、既存の町営バス路線との一体化を進めることで、地域交通の維持を図る。

 両町と合意すれば、最短で2025年4月に新たな交通体系に転換し、数年後に共同運営に移ると想定。同社によると、鉄路廃止後に新組織を立ち上げ、自治体と共同運営する方式は全国でも珍しいという。

 青森市で同日開かれた津軽線沿線4市町村と県、JR東による第2回首長級会議で、同社の久保公人盛岡支社長が案を公表。同社は現在、蟹田-三厩間の代替交通として、バス、乗り合いタクシーを実証的に運行しており、鉄路から本格転換後は同社主体でNPOなどの組織を設立する。

 NPOはJRからの出向社員や自治体職員で構成。同社の代替交通と2町の町営バスは一部地区で運行ルートが重複しており、一括運用で効率化を図る。それぞれが単独運営するよりも費用を削減でき、自治体側の負担も現在より軽減できるという。

 JR東によると、新たな交通体系の年間運営費は約1億7千万円。鉄路からバス転換したJR他社の先行事例などを参考に18年以上の運営を想定し、待合所の整備など初期投資と合わせて負担額が30億~40億円になるとの試算も示した。蟹田-三厩間の運行本数は被災前の5往復から8往復に増える。

 同社の説明を受け、鉄路復旧を基本姿勢としている今別町の阿部義治町長は「これだけ投資するのであれば、津軽線を復旧して動かせるのではないか」と指摘。

 バス、タクシー転換に賛成する外ケ浜町の山崎結子町長は「地域とJRが一体となって住民に優しい交通体系をつくる先進事例とすることができれば、すごくいいこと」と語った。

 同社や両町は次回以降の会合で、代替交通と町営バスを組み合わせた運行ルートなど詳細について協議する予定。

 久保支社長は「これまでよりも具体的な形を示したので、持ち帰って検討してほしい」と述べた。

© 株式会社東奥日報社