那須雪崩事故、教諭ら3被告に禁錮4年求刑 検察側「過失、被害結果は重大」 弁護側は無罪主張 宇都宮地裁で論告求刑公判

宇都宮地裁

 栃木県那須町で2017年3月、登山講習会中だった大田原高山岳部の生徒7人と教諭1人が死亡した雪崩事故で、業務上過失致死傷罪に問われた男性教諭ら3人の論告求刑公判が29日、宇都宮地裁(瀧岡俊文(たきおかとしふみ)裁判長)で開かれた。検察側は「大量降雪や急斜面の危険性などを全く検討せず、安易に計画を変更し漫然と訓練を行った。過失や被害結果は重大」などとして、3被告に禁錮4年を求刑した。弁護側は「雪崩発生の予見可能性はなかった」などとして改めて無罪を主張し、結審した。判決は5月30日に言い渡される。

 在宅起訴されたのは、いずれも当時の講習会責任者(57)、引率者(55)、別の引率者(61)の3被告。

 公判では、雪崩発生を予見できたかどうかが主な争点になっている。

 検察側は論告で、現場周辺の写真や関係者の証言などから事故当日の積雪量は30センチ以上だったと説明。雪崩が発生した斜面の斜度などから「雪崩の危険性を容易に知り得た」と言及した。

 3被告が茶臼岳登山から深雪歩行訓練へと漫然と計画を変更し、安全を確保するための明確な訓練範囲を定めず、周知徹底も怠ったと指摘。「注意義務を尽くせば事故を防げたのは明らか」と強調した。

 一方、弁護側は最終弁論で、積雪は15センチ程度にとどまり、天候や積雪など必要な情報収集をした上で訓練範囲を安全なゲレンデと樹林帯と明確に定め、共有したと主張。「生徒が頂上まで登る強い意志を有しており、引率者の被告(55)の制止を押し切った」と述べた。「雪崩の予見可能性はなく、3人の行為と雪崩による死傷事故に因果関係はない」と反論した。

 被害者参加制度により、遺族の被害者論告も行われた。代理人弁護士は「実刑に処するのが相当」との求刑意見を述べた。

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