「悔しい。小さなところが失点に繋がる」初先発も3失点関与の長谷部誠が語った“感覚のズレ”。それでも指揮官は拍手を送った「静かなリーダーが必要だった」【現地発コラム】

フランクフルトの長谷部誠がブンデスリーガ22節のフライブルク戦で今季初スタメンを飾り、フル出場を果たした。

ドイツ代表の経験があるCBロビン・コッホが5枚目のイエローカードで出場停止を受けての出場ではある。だが、それまでコッホが負傷欠場した時にクラウス・トップメラー監督が代役に指名したのは長谷部ではなく、クロアチア人フルボイエ・スモルチッチだった。

トップメラーは試合後の記者会見で長谷部起用の意図について、「マコトに関しては、彼が持つ優れたパーソナリティ、ピッチ上での安定感が必要だと思った。“静かなリーダー”として、ピッチに彼のような選手を置くというのがアイデアだった」と明かしている。

堂安律がプレーするフライブルクに対して3度リードを奪いながら、その都度追いつかれて3-3の引き分け。久しぶりの出場を長谷部自身はどのように見たのだろうか。

「結果としては、やはり3回リードして追いつかれてのドローなので、非常にもったいない。試合運びも含めてもう少しいいゲームができたかなと思うんですけど、正直に言ったら、失点以外でアウェーで非常にいいゲームができていたというか、いい戦術でやれていたと思う」(長谷部)

フランクフルトは直近5試合で勝ちなし。不用意なミスで失点を繰り返していたこともあり、トップメラー監督としては長谷部のクオリティの高いゲームコントロール能力と冷静で適切なポジショニングでチームに落ち着きと安定をもたらしたいという狙いがあったのだろう。

長谷部自身が述懐するように、失点以外のシーンでは上々のプレーを見せていた。ラインコントロールは巧みで、味方との距離感も悪くない。

38分、フライブルク攻撃時のこぼれ球を拾ったシーンでは唸らされた。ボールを持つ長谷部に対して複数の選手がプレスにきている状況で、何一つ慌てることなくスムーズで的確な切り返し。合気道のように相手のアタックを外し、味方に時間を作り出した。トップメラーも拍手を送る。

ただ、結果として3失点全てに絡んでしまった。

「1点目は足を閉じるべきだと思うし、2点目はPKの部分もそうなんですけど、その前のところで時間を考えて、後ろで繋ぐっていうよりは、もう少しシンプルにプレーしなければいけなかったと思う。3失点目は不運といえば不運なんですけど、ああいうところで、しっかりとクリアできるかできないかっていうのはね。個人的には非常にできた部分ももちろんあれば、そうじゃない失点というところで非常に悔しい試合でしたね」

長谷部らしく一つ一つに責任感を持ったコメントを残している。1点目はシュートへのアプローチが少し遅れ、股下を抜けたシュートがこぼれ、堂安のゴールとなった。2失点目は自陣で軽率なパス回しからのボールが長谷部へとこぼれ、出足が一瞬後れた足が、ボールをさらいに来た相手FWをひっかけてしまった。

【動画】反応が速すぎる!長谷部の眼前で堂安が右足弾
3失点目はセットプレーからの流れでクロスボールに懸命に競ったが、オーストリア代表ミヒャエル・グレゴリチュにヘディングシュートを許してしまう。このセットプレー前にずれを見つけたトップメラー監督が選手の配置について大きな声で指示を出していたが、それが誰にも届かなかった。

「やっぱり個人的なところで、一歩(相手に)寄せ切るところであったり、パスを出すタイミングだったり。そういうところの部分は久しぶりだったというのもあった。本当に小さなところなんですけど、そういう小さなところがやっぱりこういうレベルでは失点に繋がる。本当に感覚的なものなんですけどね」(長谷部)

フランクフルトはヨーロッパカンファレンスリーグの決勝トーナメントプレーオフで、日本代表DF町田浩樹がプレーするベルギーリーグのユニオン・サン=ジロワーズに敗れた。リーグではまだ6位につけてはいるが、安泰とは言えない。

指揮官は「システム的に変化させた方がいいのか考えてはいる」と口にしており、今後メンバー構成も含めてテコ入れが行われるかもしれない。ここ数シーズン、チームの危機をいつも救ってきた長谷部だが、果たして今季もそんな役割が回ってくるのだろうか。

取材・文●中野吉之伴

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