給食費無償化に疑問の声 青森県知事の回答は

記者会見で質問に答える宮下知事=29日、県庁

 宮下宗一郎知事は29日の定例記者会見で、小中学校給食費の全県的な無償化に向けた市町村への交付金創設を巡り、「不公平感がある」として青森市議会が見直しを求める意見書を提出する動きがあることに対し、市町村が自らの決定により行政運営を行うことを尊重する地方自治の基本理念に触れつつ「必要に応じ説明する機会もあると思う。誤解を取り除いていきたい」と述べた。

 青森市など県内17市町村は、自前の財源で小中学校の給食費を無償化している。青森市議会は意見書案の中で、同市は一部事業の見直しや廃止などで無償化の財源を捻出しているとし、給食費無償化に必要な経費全額を全市町村に補助するよう県に求めている。

 記者会見で宮下知事は、交付金制度の検討段階では全市町村一律で給食費無償化に必要な財源を交付しようと考えたと説明。ただ、こうした手法は「地方自治を大事にする私の政治の基本原則に反する。(市町村の)自己決定や自治権を侵害している」と思い直し、自らの意思と財源で既に無償化を決めて実施している市町村と、無償化していない市町村を分けて交付する仕組みにしたという。

 県の制度は、給食費を既に無償化している市町村には別の子育て費用無償化事業を行う場合に必要経費の8割を負担することとしている。青森市議会は「2割分の新たな財源が必要となり、さらなる既存事業の見直しや廃止につながる」と懸念を示しているが、宮下知事は「県が80%を負担する破格の制度。こういう交付金ができれば今までできなかったことをやろうという形になっていくはず。受け取らないと言ったら親御さんたちが怒るのではないか」と語った。

 このほか会見で宮下知事は、弘南鉄道が県に追加の財政支援を要望したことに関し「安全管理の不行き届きは論外。鉄道事業者たる資格を疑う」としつつ「地域の暮らしを支える鉄道なので、県として応援することが前提」と述べた。空席が続く2人目の副知事の人選に関しては「今定例県議会で、方針についてしっかりお答えできると思っている」と語った。

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 学校給食費無償化等子育て支援交付金 小中学校給食費の全県的な無償化を目指し、県が創設を予定している市町村向けの交付金。現在給食費を無償化していない市町村には、1食当たり小学校280円、中学校310円を上限に積算した必要経費全額を交付。既に給食費を無償化している市町村に対しては、給食費以外の子育て費用(医療費、0~2歳保育料など)の無償化にかかる経費やその他の子育て支援事業費のうち8割を交付する。

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