踏切に点字ブロックを 国が指針改定、視覚障害者訴え

 目の不自由な人が歩行する際、進行方向や危険箇所の位置を知らせる情報源となるのが点字ブロックだ。安全な移動に欠かせない設備だが、敷設は十分とはいえない。2022年には奈良県の踏切内で、全盲の女性が電車にはねられる死亡事故が発生。国は今年1月、道路のバリアフリー指針を改定し、道路管理者の自治体などに点字ブロックの整備に向けた積極的な対応を促そうとしている。

 道路のバリアフリー基準には、①義務②標準的③望ましい―の3段階があり、これまで踏切内における点字などの誘導表示は、設置が「望ましい」とされていた。国土交通省は踏切内に点字などの誘導表示を増やすため、整備の位置付けを従来の「望ましい」から「標準的」に格上げ。点字をたどれば踏切から逸脱せず渡れるように、道路管理者に対応を促す。

 群馬県視覚障害者福祉協会の茂木勤会長(71)は盲学校に通学していたころ、接近する電車に気付かず、踏切内で警笛を鳴らされた経験があるという。現在は高架化が進み、踏切を歩いて渡る頻度は少ないというが、「都内など、複数の線路にまたがる広い踏切を渡るのはハードルが高い」と話す。

 慣れている道でも、自分のいる場所が分からなくなることはあるとして、「踏切内にいることを確実に認識し、安全に移動できるために何ができるか考えてほしい」と訴える。歩道や駅のホームの点字ブロックをはじめ、横断歩道の道しるべとなる「エスコートゾーン」も整備が進んでいないと指摘する。

 国交省は今年1月、遮断機や警報機が無い、歩道が狭いといった踏切を「改良すべき踏切」として、全国408カ所を追加指定。県内は前橋や高崎などの4カ所が選定され、工事を進めている。

 県高崎土木事務所によると、そのうち高崎市新町の踏切道「第二藤岡街道」は、踏切内に点字ブロックを設置する工事を検討している。県道路管理課は「踏切道の安全確保のため速やかに工事を進めたい」としている。

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