物価目標実現、今のところまだそこまでは至っていない=植田日銀総裁

Takaya Yamaguchi

[サンパウロ/東京 29日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は29日、ブラジル・サンパウロで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議後の会見で、2%の物価目標の持続的・安定的実現について、現時点で達成が見通せる状況ではないとの認識を示した。「私の考えでは、今のところまだそこまでには至っていないということかと思う」と語った。

植田総裁は神田真人財務官とともに記者会見した。

物価目標達成について植田総裁は「それが見通せるという確認のためには、賃金と物価の好循環がうまく回りだしているかどうか、強まりつつあるかどうかということを確認していく作業を続けるということだと思う」と語った。

そのうえで植田総裁は「今年の春季労使交渉の動向は、その確認作業のなかでひとつの大きなポイントであるというふうには考えている」の認識を示した。

マイナス金利政策を巡り、3、4月のいずれかの会合での解除を予想する声が広がっていることの受け止めを問われ、植田総裁は「(春闘の結果が)ある程度まとまって数字が出てくるのは3月以降と考えている」とした。

そのうえで「集計された数字が出てきたところで、ヒアリングなどで集められた情報を加えて、春闘あるいは賃金の動きについては確認したうえで、その他の賃金、物価の好循環に関する情報とあわせて各会合で議論していく」と述べた。

直近の実質国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナス成長となったことについては「大まかな姿としては昨年のはじめから半ばにかけてコロナからの経済再開を受けて、かなり強い成長をしばらく続けたあとの踊り場」との見方を示した。

内需がさえない動きを続けていることに関しては「消費のほうは春闘での賃金も結果にある程度期待できる。実質賃金がただちにプラスに転じることはないかもしれないが、かなり追い風の動きが続くことはプラスになる」と言及。設備投資についても「(強い計画が)どこかで実現してくる」とし、全体として「基本的には景気は緩やかに回復している。先行きもその姿を続ける見方に変化はない」と述べた。

世界経済の動向については「米中心にソフトランディング(軟着陸)がベースラインの見方になりつつある」と指摘した。「1月に展望リポートを作成したが、その時にみていた世界経済についての姿とだいたい同じもので、その時の見通しが世界経済については確認できたというのが今回の収穫だった」とも述べた。

© ロイター