【震災13年 相次ぐ自然災害】被災地の連携強めて(3月1日)

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から11日で13年になる。有事への備えは万全か。県、市町村をはじめ県民一人一人が改めて点検する必要がある。国内の災害で顕在化した課題には敏感に目を向け、防災と減災の不断の取り組みにつなげていきたい。

 能登半島地震は1日で発生2カ月を迎えた。寸断された道路、破損した上下水道など生活基盤の復旧は長期を要し、地形が閉ざされた半島特有の災害対応の難しさも浮き彫りにした。被害が甚大な石川県の死者の9割は家屋倒壊による、との結果は耐震補強してさえいれば、救える命があった可能性を物語る。継ぎ手のいない老朽家屋に対し、高額な修繕費をかける気にはなれない過疎・高齢集落の現実も浮かび上がった。

 本県をはじめ、どの地方にも通じる高齢世帯の事情にどう寄り添うかは機微な課題といえる。お年寄りを含め、災害弱者とされる人たちへの行政の支援や社会の見守りは行き届いているのか。地域の安全安心な暮らしと防災力を高める上でも、絶えず確認していかねばならないだろう。

 津波による人的被害は限定的と伝わる。石川県珠洲市三崎町の寺家下出地区は地震と津波で多くの家屋が倒壊した。そんな中、大半が高齢の住民は揺れが収まり次第、荷物を持たず、5分以内に高台に避難して全員無事だった。東日本大震災以降、定期的に実施してきた避難訓練が生かされたという。

 本県沿岸部で千人を超す犠牲者を出した痛ましい津波被害の教訓が共有されていたのは意義深い。震災と原発事故の記憶の風化が懸念される中、経験を伝え継ぐ営みは防災の礎にもなる。

 能登半島地震の被災地をよそに、国会は政治とカネの問題で停滞している。岸田文雄首相は、29日の衆院政治倫理審査会で信頼回復を期したものの、局面打開には程遠い。被災者の苦境を直視して政治不信の払拭と政治改革を急ぎ、復旧・復興に向けた議論を深めるべきだ。

 県内の自治体、警察・消防、医療関係者は自らの被災体験を基にさまざまな支援に尽くしている。政府、国会の動きを注視しつつ、被災地間の公助や共助の大切さを胸に刻み、復興の道を共に歩んでいきたい。(五十嵐稔)

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