【ひと模様】難病に負けず新たな夢へ 斎藤萌媛さん(福島工高定時制)、3月1日に卒業式

難病と向き合いながら資格取得などに挑み続けた斎藤萌媛さん。「つらい思いをする人に寄り添いたい」との思いを胸に学びやを巣立つ

 福島工高定時制4年の斎藤萌媛(もえ)さん(19)=福島市=は中学時代に国指定の難病を発症。家族や周囲に支えられて病と向き合い、勉学やアルバイトに励んできた。4年間で多くの資格を取り、全国工業高校長協会のジュニアマイスター顕彰制度で特別表彰に輝いた。1日に卒業式を迎え、春から社会に出る。闘病経験も力に変えて「つらい思いをしている人に、寄り添える人間になりたい」とさらに成長を誓う。

 体の異変に気付いたのは約7年前。信陵中1年の冬だった。腹水や腹痛に襲われ、手術を受けた。その後も検査のため病院を何軒も回った。潰瘍性大腸炎と言われたが、薬を飲んでも消化管の炎症や潰瘍が改善せず、吐血を繰り返すなど病状が悪化。3年の夏に「クローン病」と診断された。

 中学にはほとんど通えず一時は高校への進学も諦めたが、父和範さんと母京子さんが「サポートするから挑戦してみないか」と背中を押してくれた。3年時の担任に「日中に通院し、夕方から授業に出られる」と定時制を薦められ、福島工高を選んだ。

 高校生になっても体調は安定せず、ひどい時は1週間に何度も救急車で運ばれた。病室で点滴針を何度も刺され「心が折れかけた」が、両親が寄り添ってくれた。「2人のおかげで乗り越えられた」と感謝する。

 ジュニアマイスター顕彰制度を意識し始めたのは、ある先輩が表彰されたのがきっかけだ。各種資格・検定の難易度別に点数やランクがあり、Aランク以上の資格を取った上で合計60点以上の生徒を特別表彰する。3年生になり、具合の悪さを感じたら早退するなど病とうまく付き合えるようになった。「高校に行かせてもらえた以上は上を目指す」と向学心を高めた。

 週に2~4回アルバイトしながら、始業の2時間前に登校して各種資格・検定試験の過去問題を解いた。体調が優れない日も横になりながら、スマートフォンで過去問題と向き合った。

 Aランクに当たる「1級ボイラー技士」を3年生で取得。4年生でパソコン利用技術検定1級や計算技術検定2級に合格するなど、在学中に六つの資格と四つの検定に受かり、合計点62点として1月に特別表彰を受けた。努力が実を結んだと感じ、うれしかった。

 4月からは社会人となり、市内の事業所で接客を伴う仕事に就く。聴覚障害のあるお客さんへの対応を想定し、手話を独学で学んでいる。手話技能検定7級を持っているが、これからも上達を目指すつもりだ。

 友人たちは体調を気遣ってくれ、先生は勉強の悩みを聞いてくれた。4年間で多くの温かさに触れ、ついに卒業を迎えた。「たくさんの人に助けてもらった。今度は自分が困っている人を助けたい」。新たな門出に、希望いっぱいの青写真を描く。

※クローン病 国指定難病「炎症性腸疾患(IBD)」の一つ。原因不明で主に10~20代の若者が発症する。口腔(こうくう)から食道、胃、腸などの消化管に炎症や潰瘍が起きる。腹痛や下痢、体重減などの症状が寛解したり、再燃したりする。完全に治癒する方法はなく、免疫の異常を抑える治療を続けながら病気と付き合う必要がある。厚生労働省によると、国内の患者数は2022(令和4)年度で5万184人。

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