対馬市長選 終盤情勢 荒巻候補「処分場誘致」単一争点、比田勝候補「持続可能な島づくりを」

持続可能な島づくりを訴える比田勝候補(左)、最終処分場誘致を訴える荒巻候補(右)

 任期満了に伴う対馬市長選は3日の投開票に向け終盤戦に入った。争点は、昨年島を二分する議論となった原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)最終処分場誘致の是非。新人の飲食店経営、荒巻靖彦候補(59)は誘致による地域活性化を訴え、3期目を目指す現職の比田勝尚喜候補(69)=自民、公明推薦=は反対の立場を堅持する。2020年の前回と同じ顔触れの選挙に、市民からは冷めた声も聞かれる。

 「(最終処分場誘致で)とてつもないお金が対馬に流れ込む。笑顔の絶えない豊かな対馬を、皆さんぜひ想像してください」。2月27日夜、同市厳原町であった個人演説会で、荒巻候補が聴衆に語りかけた。会場には処分場誘致に賛成する市議数人も姿を見せた。
 前回に続き、大阪府からの挑戦。1カ月前に対馬入りし、地域を回ってつじ立ちを重ねた。賛成票を掘り起こそうと、処分場誘致のみを掲げる「ワンイシュー(単一争点)」で臨む。市議会は昨年、建設4団体が提出した処分場選定調査の促進請願を10対8の賛成多数で採択。「市民の反応は4年前と明らかに違う」
 知名度不足挽回に「あと1週間は欲しい」と悩みも明かす。請願に賛成した市議の多くや建設団体は現職支援に回った。足掛かりのない広大な土地で浸透を図れるかは見通せない。
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 一方の比田勝候補。建設業や漁協を含め、100以上の企業・団体などから推薦を受け、組織戦を展開する。対馬沿岸に大量に漂着する海ごみ問題を踏まえ「核のごみよりも、海ごみを有効活用したい」と、再資源化などを含めた持続可能な島づくりを訴える。
 昨年9月、調査を受け入れないと表明し、賛成派市議とのしこりが懸念されたが、その半数程度を味方につけた。ある市議は「受け入れないのは市長の権限。それとこれは別」と、さっぱりした様子で応援演説のマイクを握った。
 ただ、反対派の支援者はこうした市議を快く思わない。「(市議が)はっきり(処分場に)反対を明言したならいいが…」。現職が勝つためには目をつぶるという。自民党推薦についても党派閥の裏金問題があり「マイナスはマイナスだ」(党市議)との見方も。
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 投票率は両陣営ともに、過去最低だった前回63.23%を下回る60%程度と予想。厳原町の70代男性団体職員は寂しそうに話す。「隣の壱岐市長選は4人も立候補を表明した。4年前と同じ顔触れというのが、対馬の活気のなさを顕著に表している

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