地産地消を進める兵庫・明石の給食に…なぜ北海道産ホタテ? 中国の輸入禁止の影響が

北海道産のホタテを使った給食を楽しむ生徒たち=大蔵中学校

 兵庫県明石市が学校給食にタコやのりなど地元海産物のメニューを出している。食育や地産地消を進めるためで、小中、養護学校で1月から3月までに14回提供する。ところで、メニュー内容を眺めているうちに、あることに気付いた。ほとんどの食材が明石市か兵庫県で取れたものなのに、一つだけが北海道産なのだ。地産地消とは違うような…。疑問を抱き、市教育委員会に経緯を尋ねた。(領五菜月) ### ■「広大な海を感じる味」

 その食材とはホタテ。しかも、市教委の担当者に聞くと明石市には無料での提供だという。

 今回特別メニューとして北海道産ホタテが給食に出たきっかけは、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を理由に中国が日本産水産物の輸入禁止とし、商品が行き場を失ったことだ。

 昨年8月に処理水の放水が始まると中国はすぐに日本産水産物を禁輸に。ナマコやホタテ、養殖ブリなどを輸出できなくなった。禁輸措置は水産物の取引価格にも影響し、中国への輸出が盛んだった北海道産のホタテなどは急落した。

 経済産業省などは昨年から水産業者などへのサポート事業を実施。輸出が大きく減ったホタテやナマコを漁業者団体が一時的に買い取り保管する費用や、学校給食や社員食堂に提供する際の調達費や運送費の補助、ネット販売拡充の支援などを行う。

 明石市はこれを利用して水産関係の事業団体からホタテの提供を受け、市立学校の給食として活用した。県でも同様の取り組みをしており、今回の地元海産物のメニューで出された県産のアカエイやマダイなどは無償で提供を受けた。

 小学校は野菜とホタテのクリームシチュー、中学校はホタテとブロッコリーのグリルとして、26、27日の2日分けて提供された。

 大蔵中学校(西朝霧丘)では27日の給食に出され、生徒たちは大きな口でホタテを頰張り「おいしい」と笑顔を見せた。2年の女子生徒(14)は「ブロッコリーとの相性が良かった。北海道の広大な海を感じる味」と話した。市教育委員会の担当者は「普段給食に出せない食材を提供できる良い機会になった」と話している。

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