物流運賃値上げ、環境改善 茨城県内業界 規制対応急ぐ 2024年問題

配送を終えたトラックが並ぶ常磐運送の駐車場。運転手の労働環境改善が進む=29日午後6時22分、水戸市平須町

物流業界の「2024年問題」で、ドライバーの時間外労働に関する規制導入まで1カ月に迫った。輸送能力の低下を防ぐため、運送業者が荷主側への値上げ交渉に乗り出し、物流拠点などでは荷降ろしの待ち時間短縮の取り組みが進むなど、茨城県内で労働環境改善に向けた取り組みが続いている。

2024年問題では、トラック運転手の時間外労働の上限を年960時間とする規制が4月から始まることで、輸送力の低下が懸念されている。労働環境の改善が期待される一方、1人当たりの運べる荷物の量が減るため、配送遅れや配送料高騰などの恐れがあるほか、低賃金や高齢化などで人手不足が深刻化していることが背景にある。

茨城県内では、新たな規制導入を見据えた取り組みが加速しつつある。

運送や倉庫業などを手がける常磐運送(水戸市)ではこれまで、運転手約80人の1日当たり平均労働時間は13時間程度。同問題に対応するため、従来は1台で運んでいた荷物を2台で運ぶなど配車を工夫した結果、運転手の1日当たりの平均労働時間が1~2時間削減できたという。運転手として働く宇野勝美さん(54)は「業界全体が働きやすくなってきていると思う」と話した。

荷物の量は同じでも、運ぶ人数が増えるため人件費は増加。このため、荷主側との運賃交渉にも乗り出し、1運行当たり4~6%の値上げも達成。単価上昇分は、労働時間減少に伴う賃金低下の抑制に充てたい考えだ。業界では運転手の高齢化などで人手不足が続いていることから、同社の川又康司社長は「物流はなくてはならない経済の血液。担い手を大切にしたい」と力を込める。

荷主側でも、ドライバーの労働環境改善に向けた対応が進む。

カジュアル衣料雑貨販売のアダストリア(同)の物流センターでは、荷降ろし時の「予約受付システム」を導入。これまでは先着順の作業で、待ち時間は平均2~3時間、長い場合は約6時間に及んでいたが、導入後はほぼゼロになったという。複数の荷物をまとめて載せるパレットも活用し、運転手の作業効率向上に努める。

県トラック協会の小倉邦義会長は、規制順守について「運送事業者が荷主から理解を得るために根拠となるデータを集めるなど、取引内容に応じて荷主と協力関係を構築できるかが鍵を握る」と話した。

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