プーチン氏、ウクライナ派兵は「悲劇的結末」招くと西側に警告 年次教書演説

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2月29日の年次教書演説で、ウクライナに地上部隊を派遣しないよう西側諸国に警告した。そのような決断をすれば、「介入する者にとって悲劇的な」結果につながると述べた。

プーチン大統領は毎年恒例の教書演説で、西側諸国がロシアを軍拡競争に引きずり込もうとしていると非難した。

また、スウェーデンとフィンランドが北大西洋条約機構(NATO)に加盟したいま、ロシアは西側との国境防衛を強化する必要があるとも述べた。

プーチン氏は、西側諸国がウクライナでの紛争を「誘発」し、「ロシアが欧州を攻撃するつもりのようだと、恥ずかしげもなくうそをつき続けている」とした。

「介入主義者は悲劇的な結末を迎えることになる」と、プーチン氏は述べた。フランスのエマニュエル・マクロン大統領が26日に、西側の地上部隊をウクライナに派遣する可能性について「合意はない」ものの、「何も排除すべきではない」と発言したことに言及したとみられる。

「我々には、相手の領土にある標的を攻撃できる武器もある」と、プーチン氏は付け加えた。

「核兵器の使用と、文明の破壊につながる紛争が起こる、本物の脅威がある。向こうにはそれがわからないのか?」

アメリカ、ドイツ、イギリスなど一部のNATO加盟国は、ウクライナに地上部隊を派遣する可能性を否定している。

核兵器などの使用は

プーチン氏は最近、核戦争の可能性を示唆する発言をしており、アメリカはこれを批判している。米国務省のマシュー・ミラー報道官は「ウラジーミル・プーチン氏の無責任なレトリックを聞くのはこれが初めてではない」と述べた。

ミラー氏は「核保有国の指導者としてあるまじき発言だ」とし、アメリカはロシア政府にそのような兵器の発射計画があることを示す証拠は確認していないと付け加えた。

プーチン氏は、極超音速機や無人潜水機などのロシア製の高性能兵器について誇らしげに語り、ロシアの戦略核戦力は「完全に準備が整った状態」だとした。

ロシアをめぐっては、米政府高官が15日、「厄介な」新型対衛星兵器を開発していると指摘したが、プーチン氏はこれを非難した。

ウクライナ侵攻について

この演説では、プーチン氏がウクライナでの2年におよぶ戦いを「戦争」と明確に呼んだことが注目されている。大統領はこれまで再三、ロシアの侵攻について「特別軍事作戦」と表現すべきだと繰り返してきた。

プーチン氏はロシア国民の「絶対多数」がウクライナに侵攻するという自分の決断を支持し、ロシアの弱体化を図る西側の動きを前に、ロシア国民は団結しているのだと述べた。

5期目当選ねらう選挙を前に

年次教書演説は、プーチン氏の5期目再選が確実視されているロシア大統領選を2週間後に控える中で行われた。

クレムリン(ロシア大統領府)のドミトリー・ペスコフ報道官は、この演説の「大部分は、(プーチン氏の)選挙公約と捉えることができるもの」だと述べた。

実際、演説の大半は、税制の近代化から年金、ロシアで減少しつつある出生率の押し上げを目的としたインセンティブに至るまで、国内問題に焦点を当てたものだった。

国民の健康状態を改善する必要性についても触れ、平均寿命を延ばすための一連の対策を発表した。ロシアの現在の平均寿命は70歳と、欧州で最も低い水準となっている。

国民に対しては運動を行い、アルコールの摂取を抑えるよう求め、「飲酒をやめてスキーを始めよう!」とジョークを飛ばした。

過去最長の2時間におよんだ演説には、すべてのベテラン政治家や国営石油大手ロスネフチと国営天然ガス会社ガスプロムの最高経営責任者(CEO)、あらゆる宗派の宗教指導者たちが出席した。

この様子は首都モスクワ市内の巨大スクリーンで放映され、報道によると、複数の都市の映画館では無料で上映された。

近年のロシアで最も著名な反政権派指導者で、収監されていた北極圏の刑務所で2月16日に死亡したアレクセイ・ナワリヌイ氏(47)についての言及はなかった。

ナワリヌイ氏の妻ユリア・ナワルナヤ氏は、夫の死の責任はプーチン氏にあると主張している。

(英語記事 Putin warns West against sending troops to Ukraine

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