シーズン終盤の復帰を目指すエンビード「“必ずそこに戻ってみせる”というマインドセットでいる」<DUNKSHOOT>

現地時間2月29日(日本時間3月1日、日付は以下同)、フィラデルフィア・セブンティシクサーズのジョエル・エンビードがチーム練習後にメディアの取材に応じ、今後の復帰プランを語った。

エンビードの取材対応は、2月1日の戦線離脱後では初。1月30日のゴールデンステイト・ウォリアーズ戦を最後に離脱した昨季MVPは、左ヒザ外側半月板損傷の修復手術を受け、現在12試合連続で欠場となっている。

その間チームはタイリース・マキシーやトバイアス・ハリス、バディ・ヒールドらが奮戦するも、4勝8敗と苦しみ、2月を終えた時点でイースタン・カンファレンス5位の33勝25敗(勝率56.9%)。

6位タイで並ぶオーランド・マジックとインディアナ・ペイサーズ(いずれも34勝26敗/同56.7%)とはゲーム差なし、8位のマイアミ・ヒート(33勝26敗/同55.9%)とも0.5ゲーム差という大混戦。一時はイースト2位につけていたシクサーズだが、8位まで落ちる可能性も十分ある。
気になるエンビードの復帰時期だが、具体的に発表こそされていないものの、本人は4月14日のレギュラーシーズン終了までに戻ってくることを掲げていた。

「それがプランだ。もちろん、すべてがうまくいかなきゃならない。健康体になって、本来あるべき状態に近づけばだ。でもそれが俺のプランだ」

今季のエンビードは、34試合の出場ながら、平均35.3点、11.3リバウンド、5.7アシスト、1.15スティール、1.76ブロックにフィールドゴール成功率53.3%、フリースロー成功率88.3%と猛威を振るってきた。

昨年11月17日(対アトランタ・ホークス)から1月25日(対ペイサーズ)にかけては、出場した22試合すべてで30点以上を奪い、1月22日のサンアントニオ・スパーズ戦ではキャリアハイの70得点に18リバウンド、5アシストの超絶パフォーマンスを披露している。

「70得点ゲームは楽しかった。俺がバスケットボールの試合を支配して、70得点もする位置に達するなんて思ってもいなかった。楽しかったけど、まだ終わっちゃいない。“すべてがうまくいって、必ずそこに戻ってみせる”というマインドセットでいる」 昨年12月は驚異の月間平均40.2点、1月も同36.3点と歴史的なシーズンを送っていたエンビードだが、最後の出場となったウォリアーズ戦前の2試合も欠場しており、健康体ではなかったと明かしている。

「うまくいっていたが、俺としては身体とバスケットボールの両面で、自分が望んでいた位置には程遠い状態にあると感じていた。それは自分がベストの状態ではなかったからなんだ。俺はまだまだ新たなレベルへ進むことができる。だからこそ自分に失望していたんだ。(それまでは)楽しんでプレーしていたし、たくさんの勝利を手にして支配していたけどね」

プレーオフ出場、そして王座獲得を目指す29歳のビッグマンは、今季終了後にアメリカ代表で「2024年パリオリンピック」へ出場するチャンスもある。健康面で許されるなら、パリでプレーすることを望んでおり、その可能性は残されている。
手術を受ける決断を下すまでには5人の専門家と会って話をしたというが、その背景には、バスケットボールへの愛情があった。

「俺のマインドセットは、できるだけたくさんバスケットボールをプレーすることにある。この2か月間、俺は100%じゃなかったし、そこには程遠かった。そこでチームへ自分のすべてを捧げる必要があると感じていたんだ。なによりも勝ちたいからね」

レギュラーシーズンは残り1か月半。ここからプレーオフがスタートする4月20日まで、それぞれのスポットを巡るバトルが激化していく。シクサーズは主砲不在の期間を耐え凌ぎ、ポストシーズンへの切符を掴めるか。

「俺はバスケットボールをプレーするのが大好きなんだ。可能な限りフロアに立っていたい。自分たち(の順位)がどこであろうと関係ない。俺はただできるだけたくさんプレーして、チームを助けたいだけなんだ」

そう決意を新たにするエンビードが復帰することで、シクサーズは攻守両面において全く別のチームとなる。シーズン終盤に頼れる大黒柱が戻ってくることになれば、一躍ダークホースと化す可能性も十分ありそうだ。

文●秋山裕之(フリーライター)

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