WEST.神山智洋、生田斗真の“人間像”に憧れ 「愛される天才やなって」

連続ドラマW‐30『白暮のクロニクル』で初単独主演を務めるWEST.の神山智洋(C)WOWOW

WEST.神山智洋が、3月1日(金)からスタートするドラマ『白暮のクロニクル』(WOWOW/毎週金曜23時)にて主演を務める。同作は、画業44年を数える漫画家ゆうきまさみの同名漫画が原作。2013年から2017年まで「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で連載されていたミステリー作品で、“不老不死の種族「オキナガ」×公務員”という異色のコンビが難解な事件に挑むという内容だ。意外にも、ドラマ単独主演は本作が初となる神山にインタビューすると、撮影中のエピソードや、キャリアについて語ってくれた。(取材・文=於ありさ)

■見た目と実年齢が異なる役の難しさは?

――まずは、原作を読んだ感想を教えてください。

神山:最初に設定を聞いた時、いわゆる復讐劇のようなシリアスな作品なのかなと思ったのですが、実際に原作を読んでみたら意外とポップでコミカルな印象を受けました。僕が演じる“雪村魁”と松井(愛莉)さんが演じる“伏木あかり”のでこぼこ感というか、掛け合いがキャッチーで面白いなと。なので「これをどういうふうに再現しましょうか?」と、2人で本読みの際に話しました。

――神山さんが演じた雪村は不老不死の体質を持つ“オキナガ”で、見た目が18歳、実年齢は88歳というキャラクターですね。どのように役作りしましたか?

神山:まずは見た目の部分で、髪の毛を明るくして、体を絞りました。原作の魁はきゃしゃなので、体重を落とした方がこの役に合っているだろうなと。骨格はどうしようもないのですが、割と肩幅があるので、体の奥行きをできるだけ薄くしようと食事制限を頑張りました。

――中身の部分はいかがですか?

神山:中身に関しては18歳でもないし、88歳でもないという不思議な感じやなと。思春期の多感な感じ、とがっている感じのまま、70年間生きてきたような人だと思いました。88歳にしては元気やし、18歳にしては大人びているみたいな。感情的には、人に対して関心がなく、期待していないというか、人間らしい部分がどんどん無くなっているというのが正しいですかね。そうなるに至った経緯を考えて、18歳の男の子が70年間生きてきたと解釈しましたが…難しいです。

――演じながらも難しさは感じましたか?

神山:「こういう場面で、魁はどうするだろう」とか「どういうふうに考えるだろう」と、演じながらずっと考えていました。ただこの作品に限らず、もともと演じながら考えるタイプなんです。もちろんそのセリフを覚える段階で「こんな感じかな」とイメージもしますが、いざ現場に入ると想定していたシチュエーションと違うこともあるし、他の共演者の方たちとキャッチボールをして作品が完成するので、そこ(演じながら考えること)は当たり前のことだけれど忘れないように意識しています。

――コメントで「リアルに見せる、リアルなところを見せていきたい」とおっしゃっていましたが、どのようにリアルを追求したのでしょうか?

神山:撮影してきたシチュエーションの中には、すごく手が込んでいるなと思うところもあったのですが、個人的には現実世界にオキナガがいたらどうなるかという点を大事にしていました。それから、できるだけ原作に忠実にというところも気にかけました。

■役者が現場の空気を作る

――撮影中、印象に残っていることを教えてください。

神山:全体的にかなり体を張りました。アクションもありますし、いっぱい走ったので。総合するとかなりの距離を走ったんじゃないかな。

――アクティブな役なんですね。

神山:一応見た目は18歳なので。自分が18歳の頃から比べると、脚力はもちろん落ちちゃっているんですけれど、できるだけ全力で走りました。監督からもずっと「はやっ!」って言われていましたから。自分的には衰えていますけどね。足が絡まるような感じがしたというか(笑)。

――今回、単独主演ということで、現場を引っ張っていこうとか、主演として心がけたことはありましたか?

神山:いい空気感を作ることは意識しました。できるだけ撮影中はみんなを笑顔にしようと思って、いっぱいしゃべりましたね。持ち得るトーク力と、僕の引き出しに入っている語彙(ごい)をすべて出しました。

――なぜそうしようと思ったのでしょう?

神山:主演ということもあるのですが、僕は、現場の環境はスタッフの皆さんが整えてくださるので、現場の空気を作るのは役者側の仕事だとずっと思っていて。いい空気感で作品作りをしていきたいという思いが、ずっと根底にあるんです。

――具体的に、主演の方がそのように振る舞っているのを見た経験が?

神山:あったかもしれないですね。それこそ生田斗真くんと共演した時に、本当に愛される天才やなって。絶対に斗真くんの周りには、誰かがいて笑っていて、みんなが「斗真くん、斗真くん」って近づいていくのがすごいなと思ったし、僕がなりたい先輩像、人間像は斗真くんが1番近いと思っています。

■一度にかなった2つの夢

――今回、オファーが来た時に「ついに来た」と思ったとコメントされていらっしゃいましたね。なぜでしょうか?

神山:4年ぶりのドラマ出演というのもありましたし、単独主演は初めてだったので「ついに来たか」と。いつかは絶対に主演をやりたいと思っていたので、お話をいただけたことがとてもうれしかったですし、それがWOWOWさんの作品というのもすごくうれしくて。願っていたことを2つ同時にかなえていただきました。

――4年ぶりのドラマ出演で気づいたことがあれば教えてください。

神山:(舞台など)演劇の場合は、同じことを毎日やるんです。1ヵ月稽古して、1ヵ月同じ演技をやる、みたいな。でも、ドラマは目まぐるしく進んでいって、撮影が終わったシーンのセリフは(基本的に)二度と言わないんです。そういうところが明らかに違うなと思いました。

なので、僕の中ではセリフの入れ方も全く違ったんですよ。演劇に関しては自分のセリフにマーカーを引いて、ディスカッションしたことを全部ノートに書く。いったん全部書いて、その中から取捨選択して整理していきます。そうすると(台本が)真っ黒になるんです。でも、今回の『白暮のクロニクル』に関しては、マーカーを引いていないし、書くこともしていなくて。どちらかと言うと、覚えて、覚えながら考えて、感じたことを現場でディスカッションして、その場でどんどん実行していくみたいな感じというか。そこが違うなと改めて思いました。

――稽古で構築していく演劇と、現場で共演者とコミュニケーションを取りながら進めていく違いということですね。

神山:そうですね。しかも、ドラマは順々に撮っていくわけではないので「この前のシーンってどうやったっけ」とか「どういうふうにここ演じておこうか」みたいなことも考えました。やっぱり撮影が始まったばかりのタイミングと後の方やと、役の解釈とかも全然違ってくるので。できるだけ、最初の方に撮影した時の気持ちを持ち続けておこうと心がけました。

――なるほど。順番通りに撮影されるわけではないからこそ、演じる役が違う人に見えてしまう可能性がある。

神山:と言いつつ、今回はオムニバスっぽく見せていくドラマなので、パートによっては台本の 持っている雰囲気がそれぞれ全然違って。その中で、どう整合性をつけていくかが演劇とはまたちょっと考え方が違うなと。それが刺激になったし面白かったです。

それから、ちょっと寂しかったです。演劇やったら本番後に「ここもっとこうできたな、じゃあ明日トライしてみよう」というようにできるけれど、映像の場合は「もうこのシーンやらへんのか」って。1シーンごとに、一球入魂するような気持ちでやっていかないといけないと思いました。

――4月には、グループとしてデビュー10周年を迎えるかと思います。年齢とキャリアを重ねる中で、仕事の向き合い方が変わったと実感することはありますか?

神山:30歳前後ぐらいで、意識が大きく変わりました。それまでは、必死に「結果を残さないと」と思って、余裕がない中で仕事をしていましたが、一度自分のことを見つめ直す機会を作って。本当に最近のことですが、そこからは余裕を持って仕事ができるようになりました。

――どのように見つめ直したのでしょう?

神山:年上のメンバーたちから「30歳になったら余裕を持って仕事ができるようになるよ」って聞いていたんです。だから、一度自分のしたいこととか、仕事、性格、幼少期のこととかを深いところまで掘り下げてみて。そうしたら、かなり変わりました。人との関わり方も考え方も「やらないと」から「できる限りでいい」って。常に100%のキャパを使うのではなく、ある程度力を抜いて仕事ができるようになりました。

――演技の面では、今後もドラマと舞台の両方をやっていきたいですか?

神山:もちろんです! できることなら、両方ともずっと続けたい。これまでは必死に役に対してしがみついてきましたが、正直自分自身が楽しむ余裕はあまりなかったですし、けっこうハードな内容のものをたくさんやらせていただいてきたように思います。ですが、一昨年の舞台『幽霊はここにいる』以来、「演技って楽しいな」って本気で思えるようになったので、お声がけいただけるなら、もう僕は「なんでもやらせてもらいます」という感じです。楽しさに気づいたのはつい最近やけど、人間に早いとか遅いとかないと思っているので、できる限り本腰を入れていきたいなと思います。

連続ドラマW‐30『白暮のクロニクル』は、WOWOWにて3月1日より毎週金曜23時放送・配信(全12話)。

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