有機フッ素化合物(PFAS)とは 全国ワースト1検出で今後どうすればいい? やっときた米軍からの回答は? 東広島市

東広島市の地下水で検出された、高濃度の有機フッ素化合物=PFAS。

その値は1リットルあたり1万5000ng…。国が定めた暫定指針値の300倍で、全国の飲み水の中で最も酷い汚染だといいます。

住民
「大ショックよねほんと。びっくりですよ、ほんとびっくりした」
「地元へ住む住民も、毎日毎日大変です」
「いままでずっと知らないで飲んでて、どれだけ身体に溜まっているか、がんになるかなとか、いろいろ想像するから」

汚染エリアのすぐそばに広がるのは、在日アメリカ軍・川上弾薬庫…。実は最近、全国各地の米軍基地近くで、河川や地下水のPFAS汚染が相次いでいます。

PFASとは一体、何か? 私たちは今後どうすべきなのか? 専門家の意見を交えて考えます。

そもそもPFASって何? 便利!だったのに…ヤバイ⁈

東広島市などの河川や地下水から有機フッ素化合物(PFAS)が検出された問題…。広島だけでなく、全国各地で検出されています。ではまず、PFASとは何なのか、ということから。

■有機フッ素化合物(PFAS)とは…?
〇フッ素と炭素が結合した化合物の総称で、少なくとも4700種以上
〇その中で特に最近注目されているのが「PFOS」と「PFOA」
〇特徴としては・水や油をはじく⇒汚れにくい
・熱に強い⇒燃えにくい
〇用途
・防水性の衣服・ハンバーガーやピザの包装紙
・フライパンや炊飯器の表面処理に使うフッ素樹脂の製造工程で利用
・特殊な消火器に入っている泡消火剤

ところが、この15年ほどの間に、欧米の調査や研究で、このPFASがかなりやっかいな物質だということがわかってきたんです。例えばアメリカ科学・工学・医学アカデミーでは、こういうことが指摘されています。
■有機フッ素化合物(PFAS)の危険性
・腎臓がんなどの発がん性
・免疫力の低下
・コレステロール値の上昇
・胎児や乳児の発達、成長への影響

そこで、各国で規制が次々に始まり、日本でも、国際的な取り決めを追いかけるように、PFOSやPFOAの製造や輸出入が禁止されてきました。

日本でも、暫定的な指針値を、PFOSとPFOAの合計で50ng/Lと決めました。環境省のまとめでは、2021年度の調査で13都府県・81地点で指針値を上回る濃度が検出されています。

そんな中、2023年12月以降、東広島市などで判明してきたのがこちらです。

基準値超えが続発する東広島市 飲用地下水として全国ワーストも

■東広島市の調査結果(河川・水路)
まずは河川や水路について…2月29日にも、新たに弾薬庫東側での汚染が6カ所判明しましたが、一番酷いものでは、指針値の80倍が検出されています。

■東広島市の調査結果(地下水)
一方、地下水からは弾薬庫東側のエリアと、弾薬庫南西側の瀬野川沿いのエリアで、合わせて15地点から、酷いところでは指針値の300倍が検出されています。これは、環境省が把握する中で、飲用される水としては全国で最悪の値です。

2月24日、東広島市は汚染が判明した地下水利用者を対象に、住民説明会を開きました。

住民
「そんな悪い水を飲んだり、食したりするようなことはしたくないから、1日も早く解決してもらいたいと思います」
「すぐ(上水道の)工事に入ってもらって、一日も早く普通の生活をしたい」
「どれくらい害があるかわからないというのがあるんで、不安はあります」

東広島市は、対象者に、応急処置として飲用水の配布を続けながら、上水道を接続する方針です。

PFASは東京や神奈川、沖縄の在日アメリカ軍基地周辺でも高濃度の値が検出されています。

高濃度検出地域での住民の不安 …対応策は?

横田基地から直線距離でおよそ10キロ。東京都国分寺市で暮らす藤木千草さんも水道水の安全性に不安を抱えています。

藤木千草さん
「これが安全じゃなかったというのも、飲み続けちゃっているので、ショック」

藤木さんが住む多摩地域でも、井戸水から国の指針値を超えるPFASが検出されました。

そこで、東京の市民団体は、2022年から、地域住民の血液検査を実施。

検査を行った650人のうち、藤木さんを含む半数以上がアメリカ科学・工学・医学アカデミーが定めた基準で「健康リスク高まる」とされる量のPFASが検出されました。

藤木千草さん
「発がん性があるとか、コレステロール値が高くなるとか色々ありますよね。若い世代の影響って何年か経ってから色々出るんだと思うので、その辺が心配です」

体内に、どれくらいのPFASが残っているかを調べる血液検査は、汚染が判明した6都府県で市民団体が実施しています。

しかし行政が取り組んだ例はまだなく、東広島市でも希望者に健康診断は実施するものの、血中濃度の測定は予定していないといいます。

東広島市 高垣広徳市長
「血液中にどれくらい残留があるか、それが健康に対してどういう因果関係を持つかというのは、医学的に今、エビデンスがないそうです。その意味からすると、血液検査をして高かった時に、ある意味、不安を煽るだけではないかというようなご意見も聞いています」

この考えに、専門家は異を唱えます。

京都大学大学院 原田浩二准教授
「エビデンスがないというのはこれは間違っています。残念ながら日本においてはそういった目安となる数値というのはまだ設定はされてはいないんですが、ドイツの環境庁、米国の科学・工学・医学アカデミー等では、血液中の濃度、これが目安より高いとですね、将来的な健康上のリスクが上昇するということを認めております。その上で、血液中の濃度に応じた特定の検査を行って、将来の病気をなるべく起こらないように、もしくは早期に治療できるようにというですね、勧告・ガイダンスを出しております。一方で、血液中の濃度がそれほど高くないとわかれば、むしろそういった情報を個人が知ることによって、むしろ不安を解消するということもありうるんではないかと」

汚染判明後にやるべき3つのポイント ①飲用の中止 ②健康状態の確認 そして…?

原田准教授によりますと、大切なことは主に3つあって、
(1)汚染された水を飲まないこと
⇒東広島市では飲用水の配布と上水道接続の方針
(2)健康状態を確認すること
⇒現在の状態を「診断」することと今後のための「濃度測定」
(3)発生源を断つ、ということなんです。
ですが、今のところ発生源は特定できていません。ただ、こちらをご覧下さい。

■在日米軍基地周辺のPFAS検出地点
これらの指針値超えのポイントには、いずれも、在日米軍基地の近くにあります。(一般的に)基地では、かつてPFASを含む泡消火剤が使われていて、汚染との関連が疑われています。

■東広島市の検出地点
東広島市の高濃度地域も、米軍川上弾薬庫に接しています。

東広島市は、2023年12月以降、国を通じて米軍に対して何度も情報公開や、水質調査を要求しています。そんな中、中国四国防衛局を通じて、2月27日に、東広島市に回答がありました。それがこちらです。

■米軍からの回答は…
〇県内の施設においては、これまでに、泡消火剤を、消火活動や訓練で使用したことはない。
〇泡消火剤は、2020年におよそ8300Lを処分し、一切保有していない。

東広島市は、改めて▽2020年の処分の方法や▽水質検査の実施などを強く要請しているということです。

また、RCCの取材に対しては、
〇アメリカ軍は、検査結果を把握していて、発生源に関する懸念を共有している
〇近隣住民の安全は「最優先事項」である
と答えましたが、それ以上の具体的な回答はありませんでした。

今回、高濃度汚染が判明したのは、川の水ではなく地下水、ということで、東広島市は警戒感を高めていて、より広い範囲での調査を始めています。

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