高校生デパート(3月2日)

 有名ブランドからコロッケまで。思わず財布のひもが緩む。地方では苦境に立つと伝わるが、百貨店はまだまだ根強いファンを持つ▼会津若松市には1956(昭和31)年創業の老舗がある。若松商高内の「若商デパート」。入学時に全ての新入生が2株400円を出資する株式会社だ。文房具、パン、アイスクリームなど販売する品物を相談して決め、昼と放課後に交代でレジを打つ。最近は弁当や飲み物を持参する生徒が多い。向かい風をはね返す知恵を探る▼会津には、子どもが経済を学ぶ伝統が根付く。会津若松商工会議所青年部は児童が商品を考え、実際に販売する講座を開いている。会津農林高は昨年秋、住民が利用できるそば食堂をオープンさせた。地域の人と語らえば、暮らしを良くするアイデアが湧き、起業につながる下地が生まれる。地道な取り組みから、地域経済を担う人材がきっと育つ▼若商デパートは毎年、1千万円を超える売り上げを記録している。昨期もお見事、黒字決算。卒業生に株の元金と配当計520円が贈られた。とはいえ、レジ越しに生まれる「店員」と「顧客」の青春の絆こそが利益。お金では買えない最高の価値がある。<2024.3・2>

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