3月10日までに停戦協定を期待とバイデン米大統領、支援物資の投下も表明

アメリカのジョー・バイデン大統領は1日、イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスの戦争について、ラマダン(断食月)開始までに停戦協定が結ばれると期待していると語った。また、アメリカがガザ地区の上空から援助物資の投下を開始すると明らかにした。

ホワイトハウスでの記者会見でバイデン氏は、「我々は(協定締結に向けて)今も懸命に取り組んでいる」と述べた。

イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦をめぐり厳しい交渉が続き、ガザ地区での人道危機が悪化するなか、バイデン大統領に行動を求める圧力が高まっている。

イスラム教徒にとって神聖な月であるラマダンは、今年は3月10日か11日に始まる。

ラマダンの正確な開始日は、三日月が最初に見えることによって示されるため、場所によって異なる場合がある。

交渉に近い関係筋はロイター通信に対し、提案されている合意案では、ラマダン開始から40日間、すべての軍事行動を一時停止し、ガザへの援助流入を増やすことになると語った。

また、イスラエルの人質と引き換えに、パレスチナ人囚人を10対1の割合で釈放する合意も含まれると報じられている。

ガザ上空から援助物資投下へ

バイデン大統領はまた、ガザ地区の上空から援助物資の投下を開始すると表明。

「ひどい戦争に罪のない人たちが巻き込まれ、家族に食事を与えられずにいる。援助物資を手に入れようとすれば、どういう目に遭うか、皆さんも見ただろう」とバイデン大統領は話し、「我々はもっと対応しなくてはならないし、アメリカはもっと対応する」と述べた。

ガザ地区では北部で2月29日、支援物資を得ようとしていたパレスチナ人が少なくとも112人死亡し、760人以上が負傷した。イスラエル軍は、戦車が車列を守っていたが、押し寄せた人々が混乱を引き起こしたと非難し、脅威と思われる数人に発砲したと述べた。

これに対して、パレスチナ人の目撃者はBBCに対し、死亡した人々のほとんどはトラックにひかれたのだと話した。

国連によると、ガザ地区の人口の約25%が飢餓状態に陥る恐れがあるという。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局は、援助物資の投下は「援助提供の方法としては異様にコストのかかる、最後の手段」だとして、ガザの問題解決にはつながらないと話した。

ラザリーニ氏は2月29日に記者団に、「本当の答えは、検問所を開いて、援助物資を載せた車列と医療援助がガザ地区に入れるようにすることだ」と述べた。

米ホワイトハウスのジョン・カービー戦略広報担当調整官は、アメリカは空からの投下だけでなく陸路や海路からも、援助物資をガザに届けるため取り組みを続けると述べた。さらに、停戦合意に向けた働きかけも続けていると話した。

バイデン大統領の発表の前日には、ヨルダン空軍がガザ地区に計33トン分の医療物資や食料を投下している。

米紙ワシントン・ポストによると、ヨルダン空軍は昨年11月初めから、米英提供のGPS誘導式パラシュートを使い、自国がガザ北部で運営する病院に援助物資を投下していた。さらに今年2月末からは、食料や衛生用品、おむつなど生活必需品を投下している。

ほかにもフランスやエジプト、アラブ首長国連邦(UAE)も同様に、援助物資を投下している。

他方、援助団体は空からの物資投下は費用がかかるうえ不十分だと批判している。

イギリスの援助団体オックスファムは、「アメリカがガザに援助物資を投下するのを、我々は支持しない。これは、自分たちの政策がガザで続く残虐行為と飢えの恐れに寄与しているアメリカ政府幹部の、罪の意識をやわらげることがもっぱらの目的だ」と批判。

「ガザのパレスチナ人がぎりぎりの瀬戸際まで追い詰められている状態で、象徴としての意味しか持たないごくわずかな量の援助物資を、安全な配分の計画もないままガザに投下するなど、パレスチナ人を助けないし、ひどく侮辱するものだ」とも、オックスファムは述べ、アメリカはそれよりむしろ「イスラエルの兵器流入を断つ」努力をするべきだと求めた。

ハマスは昨年10月7日にイスラエル南部を奇襲し、約1200人を殺害し253人を拉致した。これに対してイスラエルはガザ地区への軍事作戦を開始。ハマス運営のガザ保健省は2月29日、ガザ地区の死者が3万人を超えたと発表した。

(英語記事 Biden announces US plan to airdrop aid to Gaza

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