長崎県知事・大石氏の「行動力」 内外駆けるも、懸案進展なく… 1日に任期折り返し

ひょう被害を受けたミカン農家から話を聞く大石知事(中央)=昨年11月10日、西海市

 2022年長崎県知事選で当時全国最年少知事となった大石賢吾氏(41)は1日、任期を折り返した。2年目の取り組みを中心に、自ら重視する「行動力」「県市町連携」「情報発信」の3点で検証した。

 年の瀬も押し迫った昨年12月28日。大石賢吾知事は定例会見で、この1年の漢字を色紙に「動」と記し掲げた。各地に足を運び、県民から直接意見を聞く車座集会を重ねたと強調。「現場に行き、現状を体感できた」と振り返った。
 県民の目線に立ちたいという思いは強い。昨年のある日、県北での仕事を終え、一人ふらりと佐世保バーガーの店に入り、店主や客と話が弾んだ。各地で「身近な存在」を印象付けている。
 フットワークの軽さも示すように、新型コロナウイルス禍が明けた2023年度は、海外に6回出張した。前知事の中村法道氏はコロナ前に年間平均4.3回。大石氏がやや多い。
 違いは渡航先に表れた。中村氏は約半数が中国で、歴代知事が築いてきた本県との友好関係を観光施策などに生かした。
 大石氏は就任1年目に被爆県の代表として核兵器廃絶を訴えようと、歴代知事で初めて核拡散防止条約(NPT)再検討会議に合わせて渡米。23年度も同会議準備委開催中のオーストリアを訪れたほか、文化やスポーツなどで連携する覚書を結ぶためポルトガルに渡った。
 英語が堪能な強みを生かし、欧米にも積極的に出向く姿勢は独自色と言える。ただ、従来の蓄積がない路線だけに「成果が出るのか」と疑う政財界関係者は少なくない。
 重要懸案の解決にも動いたが、進展はみえない。
 石木ダム建設事業は、就任当初こそ反対住民との対話が実現した。しかし、必要性を巡って折り合えず、22年9月を最後に途絶えたまま。昨年12月に自ら現地に出向くも、住民側から「信頼関係がない」と面会を拒否された。
 九州新幹線長崎ルートの全線フル規格化も、佐賀県の山口祥義知事とは「率直に会話ができる関係」とするが、新幹線に絞った会談には至っていない。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致計画は、独自の人脈で政権与党の有力者に接触するなど水面下で奔走したが、不認定となった。
 他方、瞬発的な行動力が際立つ場面もあった。昨年は自然災害による農水産物被害が多発。赤潮に遭った漁業者、寒波やひょうで打撃を受けたビワ、ミカン農家の元に駆け付け視察し、間を置かずに対策費を予算化した。こうした対応を農水産業関係者や県議らは高く評価する。
 一方で、彼らの中にはこんな見方をする向きもある。「農水業界はもともと前知事の支持基盤。気を配っているのではないか」

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