電子口座、サブスク…スマホの中にはデジタル情報がいっぱい 持ち主が急死したら? 家族がしておくべき最低限の備え

(資料写真)

 スマートフォンの活用が広がるなか、自分のデジタル情報をどう管理し、残すかが課題になっている。突然亡くなった場合などに、家族らが開くことができなければ、写真などのデータや電子口座に触れられない事態も起こりうる。専門家は「最低限、スマホのパスコード(画面ロック解除キー)を書き記しておいてほしい」と呼び掛けている。

 スマホの中にあるデジタル情報は幅広い。写真や動画、アドレス帳のほか、X(旧ツイッター)、インスタグラムなどの交流サイト(SNS)を使っている人も多い。近年は動画や音楽等のサブスクリプション(定額利用)サービスの利用も拡大。ネット銀行やネット証券といった電子口座などは相続にも関わる。

 総務省の通信利用動向調査によると、2022年のインターネット利用率は20~50代で95.4~98.6%。60代、70代もそれぞれ86.8%、65.5%で、年々増加傾向にある。個人の8割近くが保有するスマホには個人情報が詰まっており、万一を想定した準備は、すべての世代に求められる。

■死後に相談

 インターネットサービスを提供するシナプス(鹿児島市)には、利用者が亡くなった後、遺族からの相談が月に1、2件程度寄せられるという。

 70代の男性が急逝したケースは、スマホとパソコンのパスコードが分からず、開けなくなった。カスタマーコミュニケーション部の菊永繁和さんによると、スマホの種類によっては、パスコードを特定の回数以上間違えると初期化されてしまうことがある。「やみくもに入力してはいけない。この場合は、手掛かりが見つかるまで保管を勧めた」

 40代の夫が亡くなった事例では、妻がパスコードだけは知っており、同社がサブスクなどの解約を支援した。

 菊永さんは「スマホがさまざまなネット情報の拠点となっているので、パスコードを記しておくことが重要」と話す。

 画面を開くことができれば、アプリケーションや通信記録などをもとに、どんな契約をしていたかが、おおむね分かる。それぞれのサービスのパスワードが不明でも、再発行することで手続きが可能になる場合は多いという。

■記して管理

 菊永さんが例示したのは、解除キーを名刺大の紙に記し、マスキングテープや修正テープで隠しておく方法。第三者の目につかない場所に保管しておきたい。

 利用している各種サービス名とID、パスワード、会費の有無や支払い方法(クレジットカード、銀行引き落としなど)はノートなどに書いて記入日を記録。更新する度に書き換えることが理想だ。

 シナプスでは、契約者自身が契約内容の照会をすることが困難になった場合に備え、事前に登録した家族が確認できる仕組みがある。また、インターネット機器やサービスについての困りごとには有料のサポートパックで対応する。

 菊永さんは「亡くなったときの対応はインターネットサービスによって異なる。支援の内容も意識して選び、いざというときに備えることも大切」と話している。

スマホの「パスコード」はこんな感じで記録しておきたい。写真右は、マスキングテープで隠してある

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