高校部活動「トーナメント開催は、もう限界に来ているのではないか」 合同チーム全国大会出場は部活動活性化に「つながらない」 2人の指導者の提言

「倉吉東、予選で1試合も戦うことなく花園へ」2022年、全国ニュースとなった高校ラグビーの話題。そして翌年、全国高体連は、ラグビーなど9競技について、全国高校総体への合同チームの出場を認めると発表しました。
少子化により部員数が減少する中、この合同チームの全国大会出場は、果たして今後の部活動の活性化につながるのか?そんなテーマで研究発表をしたのは、その倉吉東高校の教員らでした。

1月18日・19日、鳥取県鳥取市で開かれた「第58回全国高等学校体育連盟研究大会」。

指導者のインターハイとも呼ばれ、高校スポーツの指導者らが、日頃の研究成果を発表し、諸課題について情報交換などをしました。

大会では、「競技力の向上」「健康と安全」「部活動の活性化」の3つのテーマで分科会が開かれ、そのうち「部活動の活性化」の分科会で、鳥取県立倉吉東高校のラグビー部監督・岩野竜二教諭と鳥取県立米子工業高校ラグビー部・山下寛人監督が、「合同チームの全国大会出場は部活動を活性化するか?」というテーマで登壇しました。

鳥取県立倉吉東高校ラグビー部監督 岩野竜二 教諭
「全国高体連が、合同チームのインターハイ参加を認める改定を行いました。まさに、私たち鳥取県の高校ラグビーが、この改定の引き金を引くことになってしまったのではないかと感じています」

倉吉東高といえば、2022年11月、全国高校ラグビー大会鳥取県予選で、ほかにエントリーした2校が規定人数を確保できず、1試合も戦わずに花園出場を決めたことが話題となりました。

少子化による部員数の減少がクローズアップされ、翌年には、全国高体連が、2023年度の全国高校総体から、ラグビーやバスケットボールなど9競技で、複数校による合同チームでの出場が可能と発表しました。

今年度の鳥取県予選では、鳥取西・倉吉総合産業・湯梨浜学園・米子東・米子工業の合同チームが倉吉東に挑みましたが、倉吉東が2年連続13度目の優勝を飾りました。

研究発表で2人は、「活性化するか?」の問いに対し、結論として「活性化につながらない」としました。

その理由の1つは、現状の高校ラグビーの実力差です。2人は、第102回全国高校ラグビー大会の地方予選を分析。単独校ではエントリーできますが、予選を勝ち抜くことが非常に困難なチームが大半であることが浮き彫りとなりました。

そしてもう1つ。
「無理して人数を集めなくても合同チームでいい」とか、全国高体連の合同チーム参加規定では認められていませんが、「合同チームの方が強いメンバーを構成できる」といった勝利至上主義が生まれてくることへの危惧です。

鳥取県立米子工業高校ラグビー部 山下寛人 監督
「合同チームでの活動機会の拡大は、二極化構造の下方のチームにとっては、部員勧誘活動の取り組み低下に繋がる可能性がある。いわゆる『逆進性』を危惧しています」

「勝利」という点では、合同チームは部活動の活性化につながらない…。そこで2人は、「勝利」は諦めないながらも、「日々の成長」という観点で、部活動の活性化を求めていくとしています。

そこで提案したのが「成長サイクル」。

成長サイクルは、「GOAL(目標設定)、DO(実践)、REFLECTION(振り返り)、UPDATE(修正)」のサイクルで、選手自身が自ら行動し、結果も受け止め、失敗すれば次の判断に生かしていく。これを繰り返していくことで、選手は成長していく。そしてそれには、多くの仲間が必要とのこと。

鳥取県立倉吉東高校ラグビー部監督 岩野竜二 教諭
「このサイクルを繰り返すことで成長し精度を上げていきます。この成長サイクルを回すにはそれなりの数の仲間が必要になります。ゴール設定や振り返りには、対話や議論を通じて行う合意形成の方が主体性もモチベーションも上がります。
実践の際には、それなりの人数がいないとメニューが限られてしまいますし、修正の際、チームの課題と個人の課題は別物であり、チーム課題の解決には、複数人で取り組む必要があります。
つまり、成長サイクルをよりよく回すためには仲間が必要であり、部員数を増やすことが、日常の活動の質を上げることに繋がります」

また2人は、部活動の活性化案として、全国大会の新しい形も提案しました。

鳥取県立倉吉東高校ラグビー部監督 岩野竜二 教諭
「1つ目は、部員数減少に対応するため、シーズンスポーツ制にすることによって競技人口を確保することです。
2つ目は、トーナメント式の大会をやめて、試合時間などの短縮などの工夫を加えてリーグ戦形式にすることで、試合経験と修正機会を保障するというものです。最後は、全国大会を複数のレベルやカテゴリーに分割するということです」

2人は、「レベルの違いすぎる対戦をトーナメントで開催するのは、もう限界に来ているのではないか」と訴えました。

参加者(山口県・サッカー部顧問)
「小さいところがどうやっていこうかっていうところで、顧問の先生いろんな苦労されてるんじゃないかなと思って。でも、2人の話を聞いていると、すごく前向きにというかポジティブに取り組まれてるので、自分の県に帰っても生かしていきたいなと思いました」

参加者(福井県・サッカー部顧問)
「鳥取や島根と大体加盟校数とか人口も似てますので、そういった同じような悩みは福井にもあります。これからの部活動は、生徒のそういう自主性、主体性がやっぱり必要になってくるんだなと改めて思いました」

現状の高校ラグビー界を見渡し、少子化の中でいかに部活動を活性化させられるか。2人の提言は、一石を投じることになりそうです。

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