長崎県知事・大石氏の「県市町連携」 問われるリーダーシップ 1日に任期折り返し

市町との「連携会議」であいさつする大石知事(中央)。県のビジョン素案に対し懸念の声も上がった=2023年11月6日、島原市

 2022年長崎県知事選で当時全国最年少知事となった大石賢吾氏(41)は1日、任期を折り返した。2年目の取り組みを中心に、自ら重視する「行動力」「県市町連携」「情報発信」の3点で検証した。

 「県と市町が連携し地域課題の解決を図っていくことが、ビジョンのコンセプトに掲げる『未来大国』の実現につながる」
 2月20日、定例県議会。冒頭の所信表明で大石賢吾知事は、10年後を見据えて本年度中に策定する「新しい長崎県づくりのビジョン」の実現を目指す決意を語った。
 市町とともに政策を推進する姿勢は、就任当初から重視してきた。若者の県外流出が著しい中、1年目は県政の基軸と位置付ける「子ども施策」で連携。全市町で18歳まで医療費助成を受けられる県独自の制度を導入した。
 県内首長の中でも、2022年知事選で精力的にサポートしてもらった宮島大典佐世保市長とは、ひときわ親密な関係を築いている。
 昨年7月には県庁に宮島氏を招き、地域課題の解決に向けた意見交換会を初めて実施。同11月にも市役所に出向いて政策ミーティングを開き、国の防衛費の大幅増額を踏まえ、米軍や自衛隊の基地を生かしたまちづくりを県市で研究する方向で一致した。
 それに比べると、ほかの市町との関係はまだ薄いように映る。
 県は同7月、県都・長崎市の鈴木史朗市長とも意見交換の場を設定したが、直前になって「市と意見集約ができなかった」として延期した。半年が過ぎても具体的な日程は決まっていない。
 大石氏は、国連の次の「持続可能な開発目標(SDGs)」に核兵器廃絶を明記させる活動に力を入れるが、被爆地の同市と連動している様子はうかがえない。
 県は同11月、市町長を集めて議論する「連携会議」を島原市で開催。新しい県づくりのビジョン素案を示し、「こども」「交流」などの分野に重点的に取り組む方針を説明した。
 出席者からは賛同の声が上がる一方、複数の首長からは「どの都道府県でも使えそうな内容。長崎県の特異性が感じられない」「離島にもっと触れてほしい」といった指摘が出た。
 特に「未来大国」というコンセプトに対しては「何を意味するのか分かりにくい」との懸念が噴出した。大石氏は「未来はリーディングな県になるという思いを込めた」と説明。県民に浸透するよう努力を続けるとし、出席者に理解を求める場面もあった。
 ビジョンが目指すのは、住民をはじめ、国内外の人々からも「選ばれる長崎県」。すべての市町が足並みをそろえ、同じ目標へ向かって進んでいけるのか。知事としてのリーダーシップが今後問われる。

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